think=「思う」だと思っていませんか?それだと英作文や英会話で、I think を連発することになりかねません。今回の記事では think のコアイメージや主な意味について解説しました。日本語の「思う」についても補足しています。
think のコアイメージ
think のコアイメージは「考える」です。
実際の用法では「考える」「思いつく」よりも「~かなと思っている」で用いられることが多いです。
think の意味の樹形図
コアイメージを元に、think の主な意味を分類したものが、次の樹形図です。
think の主な意味と例文
考える
think の最も中核的な意味は「考える」という動作です。頭を使って考えるイメージで捉えるとよいでしょう。
例文:Think big, act small.(大きく考え、小さく行動しよう)
think big は「大きく考える」という意味で、この think は「考える」という動作を表しています。この表現は、元々は think big thoughts であり、「大きいことを考える」という意味のフレーズから thoughts(考え)が省略された表現です。
(ちょっと考えさせてください)
I need to think carefully before making a decision.
(決断する前に慎重に考えなくてはならない)
She thinks a lot about her future.
(彼女は自分の将来についてよく考えている)
思いつく
think の「考える」という動作の結果、何かを思いつくのは自然な流れですね。ここから think は「思いつく」という意味が派生しています。
例文:I just thought of a great idea.(すごいアイディアを思いついた)
think of は「~を思いつく」という意味。実は「思いつく」という意味の半分くらいは of に由来しています。というのも、of には「存在を浮かび上がらせる(存在を取り出す)」働きがあるからです。think を使った「思いつく」は、基本的に think of の形を取ることに注意してください。
(何も言うことが思いつかない)
Can you think of any solutions?
(何か解決策を思いつくことはできますか?)
He thought of her when he saw the flowers.
(彼はその花を見て彼女を思い出した)
~かなと思っている(I think の形で)
考えた結果、ある考えをもつことに至れば「~かなと思っている」となります。この成り立ちからもわかるように、think は「論理的な思考」に重きを置いている単語です。
think の「~かなと思っている」は、意見・意向・予測という3つの用法で主に使われるので、以下でも3つに分けて確認していきましょう。
意見
例文:I think this is a great movie.(これはとてもよい映画かなと思っています)
I think は「私は~かなと思っている」で、その思っている内容は this is a great movie(これはとてもよい映画です)という構造になっています。
ここでもし I think がないと「これはとてもよい映画です」という不変の事実のように聞こえかねません。それに対して、I think を使うことで「私の考えだけど…」と意見を控えめにしているわけです。
このように I think には言いたいことを控えめにする効果があります。このとき、どの程度控えめにするのかは、文脈や言い方によって変わります。ただ、だいたい think は確信度が70%程度*1のときに用いる単語なので、元の言いたいことを70%程度にやわらげている*2と考えるとよいでしょう。
*1 最もよく使われる場合(中央値)が70%程度で、範囲としては60~75%程度になります。
*2 I think の訳として「~かなと思っている」と「かな」を加えているのは、日本語の「思う」は基準となる確信度が think よりも高いためです。そのため think の確信度をより正しく表すために「かな」を加えています。
I think というフレーズは、実際のところ、この言いたいことをやわらげるために用いることが多く、その場合、文頭だけでなく文中・文末にも持ってくることができます。
“Who broke this window?”(誰がこの窓を壊したんだ?)という質問に対して
例文1:I think Taro did it.(太郎がやったかなと思います)
例文2:Taro, I think, did it.(太郎が、たぶん、やったと思います)
例文3:Taro did it, I think.(太郎がやったんじゃないかなと思います)
例文1は自分の考えをまとめた上である程度はっきり伝えています。断定はしていませんが、太郎が犯人ではないかと想定しています。
例文2は太郎の名前を挙げたときに少しためらいが生じています。太郎を疑っているものの断定できないので、I think を挟み込むことで「たぶん」というニュアンスを加えています。
例文3は「太郎がやった」と述べた後で、少し言い過ぎたかなと感じて “I think” を加えています。日本語で最近よく使われている「しらんけど」に近い感覚でやわらげているわけです。
なお、それぞれの例文における確信度は言い方に大きく依存しますが、一般的に確信度が高い順に並べると 例文1 > 例文3 > 例文2 の順になるかなと思います。この順で、太郎がやったと思っているわけですね。ひとつの参考にしてもらえたらと思います。
(これが最善の選択肢かなと思います)
I think he should apologize.
(彼は謝るべきじゃないかなと思う)
“Where do you think he lives?” – “I think he lives in Kyoto.”
(「彼はどこに住んでいると思いますか?」「京都に住んでいるかなと思います」)
意向
例文:I think I’ll stay home tonight.(今夜は家にいようかなと思っています)
I think は「~かなと思っている」で、その思っている内容は I’ll stay home tonight(今夜は家にいよう)という構造になっています。I think によって、やわらかい意向として表現されています。
(明日ジムに行こうかなと思っています)
I think I’ll have the pasta.
(パスタにしようかなと思う)
予測
例文:I think it will rain tomorrow.(明日は雨が降るかなと思っています)
I think は「~かなと思っている」で、その内容は it will rain tomorrow(明日は雨が降るだろう)という構造になっています。特に確証があるわけではなく「おそらくそうだろう」というニュアンスになります。
(彼は来るかなと思っています)
I think she’ll arrive around noon.
(彼女は正午ごろに到着するかなと思います)
~ないんじゃないかなと思っている(I don’t think の形で)
I think を否定形にした I don’t think は「~ないんじゃないかなと思っている」という意味になります。
この don’t は think 単体を否定しているのではなく、don’t の後に続く内容全体を否定しています。そのため、「(何も)考えない」のような考える行為をしないことを表しているわけではないことに注意してください。
例文:I don’t think he will come.(彼は来ないんじゃないかなと思っています)
don’t は後述の内容全体(この場合は「彼は来るかなと思っている」こと)を否定しています。つまり、彼は来ないだろうと思っていることを表しています。
また I don’t think の確信度は、肯定文のときの I think と同じ程度であり、だいたい70%程度(範囲としては60~75%)になります。
そうすると、日本語訳を考えたときに「彼は来ないだろうと思っている」では少し確信度が高くなってしまいます。70%という確信度に見合った表現として「彼は来ないんじゃないかなと思っている」あたりが適切だろうと判断して*3、この訳を採用しています。
*3 日本語の「思う/思っている」は75~90%くらいの確信度で用いられることが多いです。これを70%くらいに抑えるには、肯定文のときと同じ「かなと思っている」とするのが適切と考えました。なお、「彼は来ないかなと思っている」では、少し日本語として不自然なので、こなれた表現として「彼は来ないんじゃないかなと思っている」としています。
(この計画はうまくいかないんじゃないかなと思います)
I don’t think she’s interested in this project.
(彼女はこのプロジェクトに興味がないんじゃないかなと思います)
I don’t think anyone noticed the mistake.
(誰もその間違いに気づいていないんじゃないかなと思います)
I don’t think と I think ~ not の違い
日本語では「彼が来るとは思わない」よりも「彼は来ないと思う」の方がよく使われる言い回しであるため、私たちは英語でも I think he will not come. と言ってしまいがちです。しかし、実際の英語では I don’t think he will come. の方がよく使われています。
ここでは、この2つの英文の違いについて解説しておきます。
例文 | 日本語訳 | 確信度(目安) |
---|---|---|
I don’t think he will come. | 彼は来ないんじゃないかなと思っています。 | 70% |
I think he will not come. | 彼は来ないと思っています。 | 80% |
ポイントは確信度の違いです。I don’t think では70%程度の確信度として受け取られますが、I think ~ not では80%程度の確信度として受け取られます。これはおそらく慣用的に I don’t think の方がよく使われるからだと考えられます。
これまで解説してきたように、本来的には I don’t think も I think も同じ程度の確信度を表すはずです。しかし、英語で否定するときは普通 I don’t think を用いるため、I think ~ not を使うと、より強い表現として感じられる。つまり、その分だけ10%ほど確信度が高く感じられるのだと考えています。
think を含む思考動詞の確信度の違い
ここまで think は基本的に確信度70%程度(範囲としては60~75%)で使われると説明してきました。それ以外の確信度のときに、英語では何を使うのかも軽く確認しておきましょう。
表現 | 中央値 | 範囲 | 例文 | 日本語訳 |
---|---|---|---|---|
guess | 50 | 40~60 | I guess he will come. | たぶん、彼は来るんじゃないかなと思う。 |
think | 70 | 60~75 | I think he will come. | 彼は来るかなと思っている。 |
believe | 85 | 80~90 | I believe he will come. | 彼は来ると思う。 |
be sure | 98 | 95~100 | I’m sure he will come. | 彼はきっと来ると思う。 |
なお、繰り返しになりますが、日本語の「~と思う」という表現は、75~90%くらいの高めの確信度で用いられることが多いです。そのため、それより確信度が上であれば「きっと」をつけ、確信度が下であれば「かな」や「たぶん」などをつけて、元の英語表現の確信度合いをうまく表現できるように調整しています。
日本語の「思う」の役割
英語の I think と、日本語の「(私は)~と思う」は同じような働きをする部分もありますが、まったく役割が異なる部分もあります。
I think | ~と思う | |
---|---|---|
1. 言いたいことをやわらげる | ○ | ○ |
2. 確信度 | 中程度(60~75%) | 高め(75~90%) |
3. 視界共有をオフにする | × | ○ |
1番目と2番目は既に解説済みですね。3番目の「視界共有をオフにする」について説明していきます。
日本語は話し手の視界を元に状況描写する言語です。これは日本語においては聞き手は話し手になったつもりで話を聞いているということです。(このあたりについては書籍『英会話イメージトレース体得法』で詳しく解説しています)
このことを次の新聞の投書欄から引用した文章で確認してみましょう。
職場に自分の傘を忘れてきたため、とっさに父の傘を手に子どもの保育園へと急いだ。道中、ふと傘を持つ手に温かさを感じた。私を介して父が、孫の手を握っているような感覚がしたのだ。そういえば父は、「俺が保育園に連れていくんだ」と張り切っていたっけな。また雨の日の送迎は、父の傘を使おう。この子が大きくなって、じいじの傘を使ってくれるといいな。それまで壊れないといいけど。(『読売新聞』投書欄 2017/06/04「子の送迎 じいじの形見で」)
この文章を読んでいるとき、聞き手である皆さんは話し手の視界に合わせる形で読まれたことと思います。このように日本語では、聞き手は話し手の視界を共有する形で話を理解していくわけです。
さて、「(私は)~と思う」という表現は、この視界共有をオフにする働きをもっていると述べました。そのことを、さきほどの途中に「~と思う」を入れた文章で確認してみましょう。
職場に自分の傘を忘れてきたため、とっさに父の傘を手に子どもの保育園へと急いだ。道中、ふと傘を持つ手に温かさを感じた。私を介して父が、孫の手を握っているような感覚がしたのだ。そういえば父は、「俺が保育園に連れていくんだ」と張り切っていたっけな。また雨の日の送迎は、父の傘を使おうと思う。この子が大きくなって、じいじの傘を使ってくれるといいな。それまで壊れないといいけど。
金沢じゅん氏の発表(日本英語教育学会・日本教育言語学会 第52回年次研究集会における発表 ※巻末の参考文献参照)によると、このように「~と思う」を入れた場合、金沢氏がアンケートを取った12人中11人が不自然に感じたとのことです。これについて私は次のように考えています。
まず「~と思う」を使うことで、自らの考えや思いとして聞き手に伝える=視界共有がオフになるわけですが、次の文章(この子が…使ってくれるといいな)では、また視界共有をオンにした文に戻っており、聞き手にとって視点の切り替えが忙しくなってしまっています。
・視界共有をオンにする=場面に入り込んだ状況描写モード
・視界共有をオフにする=聞き手に対して話しかけているモード
一般的な日本語のやり取りにおいては、ある程度まで視界共有をオンにした状態で状況描写をして、そこから視界共有をオフにして聞き手に対して話しかける、という流れになることが多いと思います。
そのため、さきほどの「~と思う」を入れた文章のように、視界共有のオン・オフがむやみやたらにある場合は読みとりにくい=不自然に感じるとなってしまったのだろうと考えています。
日本語の「思う」につられた I think の誤用
ここまで「思う」は視界共有をオフにする働きをもっていることを見てきました。このような「思う」は書き言葉においてよく使われます。
Q. 大地震が来たら何を持って逃げますか?
A. ペットを連れていきたいと思います。
「~と思います」によって視界共有をオフにし、それまでに述べた内容(ペットを連れていきたい)を自らの考えや思いとして聞き手に伝えています。
さて、この「ペットを連れていきたいと思う」を、I think I would like to bring my pet. と英作文すると、それは I think の誤用になってしまいます。なぜなら、I think は確信度70%くらいの思考動詞なので、I think を加えることで意志が固まっていない印象を与えてしまうからです。
この場合の日本語の「思う」は、あくまでも視界共有をオフにするために使われており、話し手からはペットを連れていく明確な意志が感じられます。つまり、そのような意志がある場合には、I think を入れてはいけないわけです。
明確な意志がある場合は、日本語側に「思う」があったとしても I think はつけずに、I will / I’m going to / I want to / I’d like to などの表現を使うようにしましょう。これだけで I think の誤用はぐっと減らせると思います。
まとめ
think のコアイメージは「考える」です。
コアイメージを元に、think の主な意味を分類したものが、次の樹形図です。
意味 | 例文 | 日本語訳 |
---|---|---|
考える | Think big, act small. | (大きく考え、小さく行動しよう) |
思いつく | I just thought of a great idea. | (すごいアイディアを思いついた) |
~かなと思っている(意見) | I think this is a great movie. | (これはとてもよい映画かなと思っています) |
~かなと思っている(意向) | I think I’ll stay home tonight. | (今夜は家にいようかなと思っています) |
~かなと思っている(予測) | I think it will rain tomorrow. | (明日は雨が降るかなと思っています) |
~ないんじゃないかなと思っている | I don’t think he will come. | (彼は来ないんじゃないかなと思っています) |
【著者から一言】
I think を「~かなと思っている」としましたが、「~じゃないかなと思っている」とした方がスッキリするかもしれません。記事内で「~かなと思っている」とした理由は、さすがにいきなり「~じゃないかなと思っている」だと文字が長すぎて読者の方が面食らうだろうと思ったためです。より適切な日本語としては「~じゃないかなと思っている」だと思っています。
【参考文献】
日本語の「(よ)うと思う」「たいと思う」の用法から考える英語学習者の I think の使用について ー 金沢じゅん(日本英語教育学会・日本教育言語学会 第52回年次研究集会における発表)
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