「彼女は髪が長い」を英語にすると She has long hair. ですが、このように have を使える日本人の方は少ないと思います。この記事では、日本人にとって扱いにくい have の意味・用法をコアイメージや意味の樹形図を用いて解説しました。
have といえば「もっている」
多くの方にとって have といえば、I have a pen. に代表される「もっている」が一般的なイメージだと思います。
一方で、Have a good day!(良い一日を!)のように「もっている」の延長線上で理解できない用法もたくさんあります。
そこで、「もっている」の代わりに have のコアイメージを用いることで、have を統一的に理解していきたいと思います。
have のコアイメージ
have のコアイメージは「手に入れて、範囲内にある」です。
have の「範囲内にある」は、主語の支配・関与する範囲内に存在することを示しています。この「支配・関与する範囲」のことを、「なわばり・テリトリー」のように解説される方もいます。どれも同じ have のことなので、みなさんにとってわかりやすいものを選んで頂ければと思います。
have の主な意味の樹形図
コアイメージを元に、have の主な意味を分類したものが、次の樹形図です。
この樹形図は、たとえば「手に入れる」という意味から「赤ちゃんを産む」や「食べる、飲む」という意味が派生していることを表しています。
have の主な意味と例文
もっている、ある、いる
have が難しいのは「もっている」だけではなく「ある、いる」も含んでいるところです。もちろん、have が表しているのは純粋な存在ではなく、「主語の範囲内にある」ことを表しています。
・次の電車まで時間がある
・僕に良い考えがあるよ
・明日、学校があるんだ
・昨日から熱があるんだ
・彼には妹がいます
これらはすべて have で表現されるわけですが、日本語から考えるとスムーズには思い浮かばないと思います。さきほどの「主語の範囲内に◯◯がある」をイメージしながら、一つずつ確認していきましょう。
物をもっている
例文:I have a book.(私は本をもっています)
イメージ:私の支配・関与する範囲内に「本」がある
これは「もっている」という意味がそのまま当てはまるパターンですね。
(彼女は車をもっています)
I have a new smartphone.
(私は新しいスマートフォンをもっています)
She has a beautiful necklace.
(彼女は美しいネックレスを持っています)
時間がある
例文:I have time to help you.(あなたを助ける時間があります)
イメージ:私の支配・関与する範囲内に「あなたを助ける時間」がある
私の範囲内に「あなたを助ける時間」があるというイメージで、「あなたを助ける時間(余裕)があります」となります。「時間がある」という日本語に対して、have が思い浮かぶようにしていきましょう。
(彼女にはプロジェクトを終えるのに十分な時間があります)
They have time for a quick coffee before the meeting.
(彼らは会議の前に急いでコーヒーを飲む時間があります)
場所・設備がある
例文:We have a swimming pool in our school.(うちの学校にはプールがある)
イメージ:私たちの支配・関与する範囲内に「学校内のプール」がある
私たちの範囲内に「学校内のプール」があるというイメージで、「うちの学校にはプールがある」となります。(→We have と There is の違いについては補足1参照)
(私は市内にオフィスがあります)
We have a large garden at home.
(私たちの家には大きな庭があります)
The company has a well-equipped gym for employees.
(その会社には従業員のための設備の整ったジムがあります)
We have a swimming pool in our school. と同じ日本語訳になる英文として There is a swimming pool in our school. があります。これらの違いについては次のようになります。
例文:We have a swimming pool in our school.
この表現は、プールが「私たちのものである」という所有感を表しています。プールを利用する側からの説明(例えば、学生や教職員が学校の設備について話す場合)として使われやすいです。
(私たちの学校にはプールがあるので、冬でも水泳の練習ができます)
例文:There is a swimming pool in our school.
この表現は、プールが学校内に「存在する」ことを強調しています。所有者や使用者に焦点を当てず、客観的に施設の存在を伝える場合(例えば、学校のパンフレットやウェブサイトなど)に使われやすいです。
(私たちの学校にはプール、図書館、体育館があります)
考え・感覚がある
例文:I have an idea.(私にアイディアがあります)
イメージ:私の支配・関与する範囲内に「アイディア」がある
私の範囲内に「アイディア」があるというイメージで、「私にアイディアがあります」となります。日本語ではシンプルに「考えがある」と言いますが、誰の考えなのかをはっきりさせたうえで、have を使って表現しましょう。
(それについて何か疑問はありますか?)
I have a good feeling about this.
(これについては良い感じがします)
特徴・性質をもっている
例文:She has long hair.(彼女は長い髪をもっている/彼女は髪が長い)
イメージ:彼女の支配・関与する範囲内に「長い髪」がある
彼女の範囲内に「長い髪」があるというイメージで、「彼女は長い髪をもっています/彼女は髪が長い」となります。
これは英文を見れば何ということもない文ですが、いざ日本語から英文を考えるとなると、なかなかこの表現が出てこない代表例ですね。誰か・何かの特徴について述べるときは、have を使うことをしっかりおさえていきましょう。(→補足2、補足3参照)
(彼女は大きな心をもっている)
He has a problem.
(彼には問題がある)
She had the kindness to read the letter.
(彼女は親切にもその手紙を読んでくれた)
「彼女は髪が長い」という日本語を英文にしたとき、比較的多くの方が Her hair is long. を思い浮かべると思います。この補足2では Her hair is long. ではダメなのか、She has long hair. との違いは何なのかについて説明しておきましょう。
例文:She has long hair.
「彼女」がどういう特徴をもっているのかについて述べる場合に使います。単独の英文ではわかりにくいかもしれませんが、英文を並べて文脈をはっきりさせるとわかりやすいと思います。
使用例:I met a new colleague today. She has long hair and is very friendly.(今日新しい同僚の子に会ったんだけど、彼女は髪が長くて、とても親切だった)
このように「彼女」について述べたい場合は、She を主語にもってきて表現します。
例文:Her hair is long.
「彼女の髪」について述べる場合に使います。こちらも英文を並べて文脈を確認しておきましょう。
使用例:Look at this picture. Her hair is long and beautiful.(この写真を見て。彼女の髪って長くてきれいだよね)
このように「彼女の髪」について述べたい場合は、Her hair を主語にもってきて表現します。
日本語:彼女は髪が長い
日本語の文章「彼女は髪が長い」について見てみると、「彼女は」という表現から「彼女」を主題にしていることがわかります。
さきほど見たように、「彼女」について述べるのであれば、She を主語にもってくるのが自然なので、She has long hair. のほうがより適切な英訳ということになるわけです。
このように Her hair is long. と She has long hair. どちらも正しい英文ですが、文脈によって自然な言い方は変わります。言いたいことが「彼女」の特徴なのか、「彼女の髪」の状態なのかで使い分けていきましょう。
日本人が Her hair is long. を使いがちなのは、「日本語では主語が省略されること」が原因の1つとして考えられます。そのことを次の文で考えてみましょう。
日本語:今日新しい同僚の子に会ったんだけど、髪が長くて、とても親切だったんだよね。
この「髪が長くて」のところを見ると、Her hair is long と言いたくなってしまう方は多いのではないでしょうか?
これは日本語の特徴なのですが、日本語では一度主題を提示したら、その後でそれについて話をする場合、その主題自体を省略することがよくあります。
私たちは「髪が長くて」という情報は、「新しい同僚の子」についての説明だとすぐにわかります。日本語の世界では、それでまったく問題ありません。
しかし、これを英訳するとなると、省略している「その彼女は」を表に出してこないといけないわけです。つまり、次のようにステップを踏む必要があるわけです。
日本語:今日新しい同僚の子に会ったんだけど、髪が長くて、とても親切だったんだよね。
→日本語:今日新しい同僚の子に会ったんだけど、(その彼女は)髪が長くて、とても親切だったんだよね。
→英文:I met a new colleague today. She has long hair and is very friendly.
日本語において誰か・何かの特徴を説明するとき、それ自身が省略されていることが多いので、それを表に出すように意識することも大事になります。
予定がある
例文:He has a school tomorrow.(彼は明日学校があるのよ)
イメージ:彼の支配・関与する範囲内に「学校」がある
彼の範囲内に「学校」があるというイメージですが、これは常識的に考えて「彼は学校がある」という意味になります。
もちろん、He has a school. だけであれば「学校を所有している」可能性もありますが、tomorrow があるので予定を表すことになります。(時間軸上での範囲内に「学校」があることになります。)
(彼らは毎週月曜日に会議があります)
I have plans to visit my family this weekend.
(今週末に家族を訪ねる予定があります)
We have a trip to the mountains planned for next month.
(来月、山への旅行の計画があります)
出来事がある
例文:We had an earthquake yesterday.(昨日、地震があった)
イメージ:私たちの支配・関与する範囲内に「地震」があった
私たちの範囲内に「地震」があったというイメージで、「昨日、地震があった」と出来事を表しています。
We という主語を使っているため、実際に地震の影響を受けたことを表しています。(There is/are 構文との違いについては『場所・設備がある』の項の補足1を参照)
(昨夜、停電がありました)
They had a fire drill this morning.
(今朝、避難訓練がありました)
I had a flat tire on my way to work.
(通勤途中でタイヤがパンクした)
経験をもっている
例文:We had a lot of fun at the amusement park.(私たちは遊園地でたくさん楽しみました)
イメージ:私たちの支配・関与する範囲内に「たくさんの楽しみ」があった
私たちの範囲内に「たくさんの楽しみ」があったというイメージで、「たくさん楽しんだ」という経験を表しています。この経験を表す用法の延長線上に、現在完了形(~した経験をもっている)があります。
(請求書を見たとき、驚きました)
She had a scare during the storm.
(嵐の間、彼女は怖い思いをしました)
After the accident, I had a shock and couldn’t speak for a few minutes.
(事故の後、私はショックを受けて数分間話すことができませんでした)
They had a thrilling adventure during their vacation.
(彼らは休暇中にスリリングな冒険をしました)
痛み・熱がある
例文:I have a fever and need to rest.(熱があるので、休む必要があります)
イメージ:私の支配・関与する範囲内に「発熱」がある
私の範囲内に「発熱」があるというイメージで、「熱がある」になります。have は熱や痛み、病気などを体内にもっている場合に使うことを覚えておきましょう。
(頭痛がします)
He had the flu last week.
(彼は先週インフルエンザにかかった)
She has cancer and is undergoing treatment.
(彼女は癌を患っており、治療を受けています)
家族・友人・ペットがいる
例文:I have a sister.(私には妹が1人います)
イメージ:私の支配・関与する範囲内に「妹」がいる
私の関係する範囲内に「妹」がいるというイメージで、「私には妹がいる」となります。have は家族・友人・ペットなど関係性のある人・動物をもっている場合に使います。
(兄弟が3人います)
I have many friends from college.
(私には大学時代の友人がたくさんいます)
I have a big dog.
(大きな犬がいます)
関係・関与がある
例文:I have a significant involvement in the project.(私はそのプロジェクトに大いに関わっています)
イメージ:私の支配・関与する範囲内に「そのプロジェクトとの重要な関わり」がある
私の関係する範囲内に「そのプロジェクトとの重要な関わり」があるというイメージで、「そのプロジェクトに大いに関わっています」になります。have は関係性がある場合に使います。
(それには関係ありません)
She has a close relationship with her mentor.
(彼女はメンターと親しい関係にあります)
They have a strong connection to the community.
(彼らはコミュニティとの強い繋がりがあります)
「もっている、ある、いる」まとめ
have は「主語の範囲内に◯◯がある」ことを表しますが、◯◯に該当するものが本当にたくさんあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
日本語の「ある、いる」に対応する場合も数多くありますが、ポイントは「主語と関係があるかどうか」です。たとえば「地震があった」という例文にしても、実際に影響を受けたのかどうかで、have を使うかどうかが変わります。一気に覚えるのは大変かもしれませんが、ひとつずつおさえていきましょう。
手に入れる
have の「手に入れる」は、「範囲外のものを範囲内に入れる」イメージで捉えるとよいでしょう。
例文:I had a letter from him.(彼からの手紙を受け取りました)
イメージ:私の支配・関与する範囲内に「手紙」を入れる
彼からの手紙を私の範囲内に入れるイメージです。
(このパンフレットをもらってもいいですか?)
I hope to have a new car by next year.
(来年までに新しい車を手に入れたいと思っています)
赤ちゃんを産む
例文:She had a baby yesterday.(彼女は昨日、赤ちゃんを産んだ)
イメージ:彼女の支配・関与する範囲内に「赤ちゃん」を入れる
赤ちゃんを彼女の範囲内に入れるイメージです。体内にいる赤ちゃんも範囲内と言えそうですが、この場合は産んで赤ちゃんを触れるようになることをもって、have(手に入れた)と言うわけですね。
食べる、飲む
例文:I have breakfast at 7 AM.(私は朝食を7時に食べます)
イメージ:私の支配・関与する範囲内に「朝食」を入れる
食べ物や飲み物を体内に入れるイメージです。
レストランで注文するときは I’ll have the spaghetti.(スパゲッティをお願いします)のように have を使うことができます。
(1つ召し上がれ)
What will you have?
(何にしますか?何を食べますか?)
Have some cake, it’s delicious.
(ケーキをどうぞ、美味しいですよ)
過ごす
have の「過ごす」は、よい一日・よい旅・休暇などを自分自身の範囲内に入れて、そのままにしておくイメージで捉えるとよいでしょう。
例文:They had a wonderful time at the party.(彼らはパーティーで素晴らしい時間を過ごしました)
イメージ:彼らの支配・関与する範囲内に「素晴らしい時間」を入れて、そのままにしておく
素晴らしい時間のままにしておくイメージで「素晴らしい時間を過ごす」となります。
(パーティーで楽しんでね!)
Have a nice trip!
(よい旅を!)
They had a wonderful vacation in Hawaii.
(彼らはハワイで素晴らしい休暇を過ごしました)
He had a bad day at work yesterday.
(彼は昨日、仕事で嫌な日を過ごしました)
アクションをとる、~する
have の後に a look や a talk のような動作(1アクション)を表す名詞を続けることで、その動作を行うことを意味します。直接動詞を使うよりも柔らかいニュアンスになります。
例文:Let’s have a walk in the park.(公園をちょっと散歩しましょう)
イメージ:我々の支配・関与する範囲内に「ひと歩き(a walk)」を入れる
have a walk は「1(ひと)歩きする」という意味です。Let’s walk in the park.(公園を歩きましょう)と比べると、have a walk は間接的に動きを表しており、直接的な動きを表していない分だけ、少し柔らかいニュアンスになります。
(この報告書をちょっと見てください)
I need to have a talk with you.
(あなたと少し話をする必要があります)
They decided to have a break and relax.
(彼らは少し休憩してリラックスすることにしました)
Can we have a chat later?
(後でちょっとおしゃべりしませんか?)
She wants to have a swim before dinner.
(彼女は夕食前に1泳ぎしたいと思っています)
He suggested we have a drink after work.
(彼は仕事の後に飲みに行くことを提案しました)
I’ll have a try at solving this puzzle.
(このパズルを解いてみます)
まとめ
have のコアイメージは「手に入れて、範囲内にある」です。have の「範囲内にある」は、主語の支配・関与する範囲内に存在することを示しています。
コアイメージを元に、have の主な意味を分類すると次のようになります。
分類 | 意味 | 例文 |
---|---|---|
もっている、ある、いる | 物をもっている | I have a book. |
時間がある | I have time to help you. | |
場所・設備がある | We have a swimming pool in our school. | |
考え・感覚がある | I have an idea. | |
特徴・性質をもっている | She has long hair. | |
予定がある | He has a school tomorrow. | |
出来事がある | We had an earthquake yesterday. | |
経験をもっている | We had a lot of fun at the amusement park. | |
痛み・熱がある | I have a fever and need to rest. | |
家族・友人・ペットがいる | I have a sister. | |
関係・関与がある | I have a significant involvement in the project. | |
手に入れる | 手に入れる | I had a letter from him. |
赤ちゃんを産む | She had a baby yesterday. | |
食べる、飲む | I have breakfast at 7 AM. | |
過ごす | 過ごす | They had a wonderful time at the party. |
アクションをとる | ~する | Let’s have a walk in the park. |
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