分詞構文がよくわかりません。意味はたくさんあるし、書き換えは複雑だし、そのわりに英会話ではあまり出てこないなんて言われるし…。ネイティブは分詞構文をどう捉えているのでしょうか?
英語の分詞構文とは何者なのか、わかりにくいですよね。この記事では分詞構文のイメージを元に、分詞構文の意味・用法(「時」「理由」「結果」)を例文解説しました。分詞構文での否定や接続詞 as などを使った書き換えについてもまとめています。
分詞構文の形式
例文:Seeing an accident ahead, I stopped my car.(前方の事故を見て、私は車を止めた)
このように 「-ing から始まる句」と「主節」という組み合わせからなる英文を分詞構文と呼び、その意味は「~して、…」などと訳されます。
※「節」とは主語・動詞を含み、文として意味が成り立つものを指します。「句」とは主語・動詞を含まないもののことです。
分詞構文の用法イメージ
分詞構文は主に「時」「理由」「結果」を表します。他にも「譲歩」「条件」を表しますが、あまり用いられることがないので本稿では省略します。
時を表す場合は、「~すること」という前提に「…である」という情景を重ねることで「~して、…である」という意味を作り出しています。
結果を表す場合は、「…である」という情景に「~すること」という結果を重ねることで「…である、その結果~することに」という意味を作り出しています。
分詞構文のポイントは「重ねる」ことですが、詳しくは例文で確認していきましょう。
分詞構文の例文解説
時を表す分詞構文
例文:Seeing me, the man ran away.(私を見て、その男は逃げ出した)
Seeing me(私を見ること)という前提に、the man ran away(その男は逃げ出した)という情景を重ねています。
意味は「私を見ることで、その男は逃げ出した」→「私を見て、その男は逃げ出した」となります。この分詞構文は「時」を表しています。
理由を表す分詞構文
例文:Having nothing to do, I went to bed early.(やることがなかったので、私は早めに寝た)
Having nothing to do(やることがないこと)という前提に、I went to bed early(私は早めに寝た)という情景を重ねています。
意味は「やることがないことで、私は早めに寝た」→「やることがなかったので、私は早めに寝た」となります。この分詞構文は「理由」を表しています。
結果を表す分詞構文
例文:A typhoon hit the city, causing big destruction.(台風がその街を襲い、大きな被害をもたらした)
A typhoon hit the city(台風がその街を襲った)という情景に、causing big destruction(大きな破壊を引き起こすこと)という結果を重ねています。
意味は「台風がその街を襲った。大きな破壊を引き起こすことになった」→「台風がその街を襲った結果、大きな破壊を引き起こすことになった」となります。
接続詞を置いて意味を明確にする
分詞構文は重ねるイメージであり、その意味は文脈に依存します。そのため、通常は聞き手がすぐに意味がわかるような場合にしか用いられません。
なお、聞き手に意味がちゃんと伝わるようにするために、while(~している間)などの接続詞を -ing句の前に置くこともあります。
例文:While skiing in Hakuba, I twisted my ankle.(白馬でスキーをしている時に、足首を捻挫した)
この例文では、while を -ing句の前に置くことで「時」を表していることを明確にしています。
分詞構文での否定語の位置
分詞構文での否定語の位置も確認しておきましょう。
例文:Not knowing what to say, she kept silent.(何と言ってよいのかわからなかったので、彼女は黙っていた)
Not knowing のように -ing句を否定する not や never などは -ing の前に置きます。
Not knowing what to say(何を言うべきかわからないこと)という前提に、she kept silent(彼女は黙ったままでいた)という情景を重ねています。
意味は「何を言うべきかわからないことで、彼女は黙ったままでいた」→「何を言うべきかわからなかったので、彼女は黙っていた」となります。
分詞構文の書き換えからみる分詞構文の構造
分詞構文から複文への書き換え
試験などで「分詞構文から複文への書き換え」はよく出題されるので、ここで確認しておきましょう。
※複文とは、主語・動詞を含んでいる節が2組以上ある英文のことです。
書き換え前:Seeing me, the man ran away.(私を見て、その男は逃げ出した)
分詞構文から複文への書き換えは、次の3ステップになります。
- 1、文脈から適切な接続詞・関係詞を考える:as(時)
- 2、-ing句の意味上の主語を主節からもってくる:the man(主語)
- 3、-ing句の動詞を主節の時制と合わせる:seeing → saw(動詞の時制)
↓
書き換え後:As the man saw me, he ran away.(その男が私を見たとき、彼は逃げ出した)
これで複文への書き換えは完了となります。
分詞構文が表す代表的な接続詞・関係詞
さきほどのステップ1に関して、分詞構文が表す代表的な接続詞・関係詞を挙げておきます。
- 時:as, when
- 理由:as, since, because
- 結果:and
書き換えからみる構造の違い
ここでは一歩進んで、書き換え前後からどのような違いがあるかを確認してみましょう。
大きなところでは次のような違いがあります。
- 分詞構文では「句」
- 複文では「節」
分詞構文における -ing句のイメージは「静的、堅い、短い」というものです。つなぎ言葉を省略して、フレーズの固まりを投げつけている感じです。
たとえるならば、忍者が木から木へ飛び移っていくようなもので、テンポはよくなりますが、聞き手がその間をつないで理解していかなければいけません。
※分詞構文が会話ではあまり用いられず、主として書き言葉で使われるのは、このようなイメージに由来しています。
一方で、複文における同じ箇所のイメージは「動的、柔らかい、長い」となります。これは普通に舗装された道を歩いていくようなものです。
言葉がつながっているおかげで、聞いた順にそのままスムーズに理解することができます。
ここで「静的」というキーワードを挙げましたが、これは「名詞的」と表現しても構いません。
そして、この記事では分詞構文に出てくる -ing を、実は「動名詞」とみなして解説してきたのです。
しかし、そうすると次のような疑問が出てくると思います。
- Q1. 分詞構文という名前なのに、使われている -ing は現在分詞ではなくて動名詞なの?
- Q2. 分詞構文には過去分詞を用いたものがありますよね。でも、過去分詞は動詞と形容詞の組み合わせで、名詞の働きはなかったと思います。もし分詞構文の -ing が現在分詞ではなく動名詞であるならば、過去分詞の分詞構文はどうやって成立しているの?
過去分詞の分詞構文
まずQ2の質問から回答していきましょう。
まず前提として分詞とは「動詞と形容詞のニュアンスをあわせもったもの」なので、ご指摘の通り過去分詞には名詞的なイメージは含まれていません。
そのうえで「過去分詞の分詞構文」とは何者なのかを考えてみましょう。
例文:Written in simple English, this book is easy to understand.(簡単な英語で書かれているので、この本はわかりやすい)
こちらが「過去分詞の分詞構文」と呼ばれるものです。
実はこれ、written の前に being が省略されたものなのです。正確に表すと次のようになります。
例文:Being written in simple English, this book is easy to understand.(簡単な英語で書かれているので、この本はわかりやすい)
この being が省略されていることは、分詞構文を複文に書き換えてみれば確認しやすいです。
書き換え前:Being written in simple English, this book is easy to understand.
- 1、文脈から適切な接続詞・関係詞を考える:since(理由)
- 2、-ing句の意味上の主語を主節からもってくる:this book(主語)
- 3、-ing句の動詞を主節の時制と合わせる:being written → is written(動詞の時制)
↓
書き換え後:Since this book is written in simple English, it is easy to understand.
being が省略されていると考えなければ、複文にしたときにうまく受動態(be動詞+過去分詞)の文章をつくることができません。
過去分詞の分詞構文においては、名詞的なイメージは過去分詞ではなく、省略されている being に含まれているというわけだったのです。
現在分詞の分詞構文
続いて、Q1の質問にも解答しましょう。
この質問への回答は、結論から述べると「Yes でもあり、No でもある」となります。なぜならば、分詞構文の -ing は動名詞であることもあれば、現在分詞であることもあるからです。
具体的に例文で確認してみましょう。
例文1:動名詞:Seeing me, the man ran away.(私を見て、その男は逃げ出した)
例文2:現在分詞:Walking along the beach, I found a beautiful shell.(ビーチを歩いている時に、私はきれいな貝がらを見つけた)
なぜこんなことが起きるのかというと、その理由は「過去分詞の分詞構文」と同じく、例文2(-ing が現在分詞)には being が省略されているからです。
例文:Being walking along the beach, I found a beautiful shell.(ビーチを歩いている時に、私はきれいな貝がらを見つけた)
過去分詞と同じように being が省略されていることを、複文に書き換えて確認しておきましょう。
書き換え前:Being walking along the beach, I found a beautiful shell.
- 1、文脈から適切な接続詞・関係詞を考える:when(時)
- 2、-ing句の意味上の主語を主節からもってくる:I(主語)
- 3、-ing句の動詞を主節の時制と合わせる:being walking → was walking(動詞の時制)
↓
書き換え後:When I was walking along the beach, I found a beautiful shell.
being が省略されていると考えなければ、複文にしたときにうまく進行形(be動詞+現在分詞)の文章をつくることができません。
現在分詞の分詞構文においても、名詞的なイメージは現在分詞ではなく、省略されている being に含まれていたというわけだったのです。
この構造は、being を省略さえしていなければ、私たち非ネイティブにもわかりやすいものです。
しかし、おそらくネイティブ的には being walking という表現が煩わしいのでしょう。確かに、-ing が二重になっていて、意味的にも重複しているような気になってしまうのは、十分理解できます。
おそらくこのような心理から普段は being が省略されて使われているのだと考えられます。
分詞構文から複文への書き換え(完全版)
being が省略されている分詞構文も含めて、複文への書き換えをまとめておきました。
※結果を表す分詞構文は、先行する主節の内容全体が意味上の主語になることがあります。参考
分詞構文まとめ
分詞構文は主に「時」「理由」「結果」を表します。
例文 | 意味 | 用法 |
---|---|---|
Seeing me, the man ran away. | 私を見て、その男は逃げ出した | 時を表す |
Having nothing to do, I went to bed early. | やることがなかったので、私は早めに寝た | 理由を表す |
A typhoon hit the city, causing big destruction. | 台風がその街を襲い、大きな被害をもたらした | 結果を表す |
【分詞構文の参考文献】
本記事では、分詞構文を名詞的な固まりと捉えています。この発想は次のペーパーから着想を得ています。ありがとうございました。
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コメント
記事は図を用いるなど工夫がなされていましたが、もう少しだけコンパクトにまとめられていたらよかったです。
下に前提をイメージし、上にそれが理由でなどというイメージを思いうかべるという方法はとても理解しやすくて覚えやすかったです。ただ、全体的に内容が濃く理解するのが少し大変でした(汗)
分詞構文はとてもややこしい部類の文法ですが、多数の文詞構文を噛み砕いて説明していただいて、とても分かりやすかったです。強いて言うならば、独立文詞構文という応用の文法の説明ももう少し付け加えて解説されていると更に良かったと思いました。
分詞構文は一見理解するのが難しいような印象を受けますが、ing句と主節の間には、時・理由・結果などの因果の関係があることを理解すると、書き言葉としては非常に使い勝手が良いものに思えました。
beingが省略されている分詞構文は複雑な部分がからんでいるので、理解するのに何回か読み直しました。また、分詞構文における-ing句のイメージは静的、堅い、短いであるが、複文における同じ箇所のイメージは動的、柔らかい、長いという対比説明は斬新な感じがしました。
分詞構文を理解する上での基本的な事がコンパクトに、でも非常にわかりやすくまとめてありますね。省略されている部分は時、理由、結果のいずれかを表しているという事を念頭におけば、迷う事もなさそうです。