英会話で話そうとしたけれど、英語がうまく出てこなくて困ってしまったという経験はありませんか?
そんなとき英会話のフレーズ集などで表現のストックを増やそうとしがちですが、もっとシンプルでパワフルな方法があります。この記事を読んで、英語が出てこない原因を把握し、根本から詰まりを解消していきましょう。
※本記事は2017年3月17日に放送されたラジオ番組で著者がお話した内容を編集したものです。
英会話で言葉に詰まる根本原因
「英会話教室やオンライン英会話などで英会話を始めたのはいいけれど、言いたいことが英語でなかなか出てこない…」ーこのようなご相談を受けることがよくあります。
なぜ私たちは英会話で言葉に詰まってしまうのでしょうか?知っている単語やフレーズが少ないから?英文法をマスターしていないから?
様々な理由が考えられますが、その根本原因は何かと問われたら、私は「日本語と英語でモノの見方が違っている」ことを挙げます。
同じ人間ですから、日本人もネイティブも見ているモノは同じです。しかし、その見ていく順序が違っているのです。
私たちが「東京の渋谷の映画館で」という日本語を聞いた順に理解できるのは、それが日本語の順序に従っているからです。
逆に「映画館で渋谷の東京の」のような日本語の語順に従っていない文は、そのままではうまくイメージを結ぶことはできません。
英語の順序と日本語の順序が似通っていればよかったのですが、残念ながら、英語と日本語は真逆だと言ってもよいくらい違っています。
そのため、私たちが日本語的なモノの見方をしたまま英語を話すとうまく言葉がつながらず、毎回のように詰まってしまっていたというわけなのです。
つまり、私たちが最初にやるべきことは英語の見ていく順序を理解すること、そしてその順序に慣れることです。これができれば、あとは単語や表現を学んでいけば大丈夫になります。そこまで到達できるように頑張っていきましょう。
英語のモノの見方「中心から周辺へ」
英語的なモノの見方の代表例として「中心的なものから周辺的なものにむかってモノを見ていく」ことを取り上げたいと思います。
英語は最初に中心を見る
例文1:A cat is going across the front of the convenience store.(コンビニの前を猫が横切っている。)
この例文において、日本語と英語で最初にどこを見ているかを確認しましょう。
日本語訳を見てもらえばわかるように、日本語では最初に「コンビニ」を見ています。それから、そのコンビニの、前を、猫が、横切っている、と続きます。
一方、英語では最初に「猫 (A cat)」を見ます。その猫が、横切っている (is going across)、前を (the front)、コンビニの (of the convenience store)、と続くわけです。
このように英語では最初に「中心的なもの、発信源となるもの」から見ていきます。ここでいう発信源とは、何かの動作をするもの、つまり主語のことです。
そのため、最初に日本語の感覚で「コンビニ (the convenience store)」を言葉に出してしまうと、それを聞いたネイティブの方々は「コンビニについての話だな」と想定してしまうわけです。
この例文で言いたいことは「猫についての話」なので、これではトピックの取り違えが発生してしまいよろしくありません。つまり、私たちが英語を話すときは最初に「中心」を述べなければいけないということなのです。
英語は中心から周辺へ言葉を並べていく
例文2:We saw the latest Star Wars movie at a movie theater in Shibuya yesterday.(昨日、渋谷の映画館でスターウォーズの最新作を見た。)
この例文において、日本語と英語でどんな順に言葉を並べていっているのかを確認しましょう。まず日本語の順番は次のようになります。
日本語では、①「昨日(日付)」→ ②「渋谷(範囲)」→ ③「映画館(地点)」となっていて、外堀から順に言葉を並べていることがわかります。
そして、最後に「④スターウォーズの最新作・⑤見た」と中心となる出来事を述べています。このように日本語は「周辺から中心へ」言葉を並べていくわけです。
それに対して、英語では「①私たち・②見た・③スターウォーズの最新作 (We saw the latest Star Wars movie)」と最初に中心となる出来事を言葉にしています。
そこから ④「映画館で (at a movie theater)」→ ⑤「渋谷の (in Shibuya)」→ ⑥「昨日 (yesterday)」と周辺に広げていくように言葉を並べます。英語は「中心から周辺へ」言葉を並べていくわけです。
英語は聞き手の疑問に答える形で情報を追加していく
この「中心から周辺へ」という英語の語順は、聞き手の疑問に答える形になっています。
どういうことかというと、もしも話し手が「私たちは観た (We saw)」までしか言わなかったら、聞き手は「何を観たの?」と疑問に思うはずです。
同じように話し手が「スターウォーズの最新作を」までしか言わなかったら、聞き手には「どこで?」という疑問が生じ、話し手が「渋谷の映画館だよ」で区切れば、聞き手には「いつのこと?」という疑問が生じるはずだ、ということです。
このように英語では聞き手が想像するであろう疑問順に言葉が並んでいるので、聞き手にとっては理解しやすい側面があるのです。
日本語では、話し手はどうしても「昨日」や「渋谷の映画館で」といった場面設定から入りたくなります。この理由は、日本語の場合は周辺的なものにいろいろな情報を含めているからです。
たとえば「渋谷の」と聞けば、渋谷という街のイメージ、若者のイメージなどが浮かぶと思います。「渋谷の映画館」と聞いたら、何かデートか友だち同士で遊んだのかなと想像できるのではないでしょうか。
このように日本語では周辺的なものが、その後の文脈に影響を及ぼしています。そのため聞き手は類推を働かせながら聞く必要があります。
逆に言えば、周辺的なものに含まれている情報を知らなければ、話にうまく乗れないことが普通に起きてしまうわけです。
私たち日本人は周辺的なものに対して、無意識のうちに膨大な情報を紐付けています。そういう重要なものなので、英語を話すときも、つい同じ感覚で場面設定から述べようとしてしまうわけなのです。
英語をうまく話すコツ
ここまで、英語的なモノの見方「中心的なものから周辺的なものにむかってモノを見ていく」について日本語と比較しながら述べてきました。
これを踏まえると、英語をうまく話すために気を付けるべきことは「言いたいことの中心(何がどうする)を探すこと」となります。
これだけだと、よく聞く「主語と動詞から言いはじめる」という言い古されたアドバイスに帰着するわけですが、むしろ重要なことは「周辺的なものから言いはじめない」ことです。
イラストでいえば、「コンビニ」から言いはじめないようにするということです。私たちは「昨日、学校でさぁ」のように言葉をはじめがちですが、英語ではこのような周辺的なものから言いはじめないように意識するようにしてください。
英語のモノの見方を身につける練習方法
英語をうまく話すコツはわかったとしても、練習しなければ身につきません。そこで、英語のモノの見方を身につけるための練習方法も簡単にお伝えします。
それは「目の前の風景を英語の語順で見ていく」という練習方法です。たとえば「コンビニの前を猫が横切っている」風景が目の前にあったとしたら、それを英語の語順で見ていくようにするということです。
それぞれの単語が英語でなんと表現するかわからなくても構いません。大事なことは英語でモノをどう見ていくか、その順番を身につけることだからです。
ぜひ通勤・通学のちょっとしたスキマ時間などを活用して、目の前の風景を英語の語順で並べていってみてください。頑張っていきましょう。
まとめ
英語のモノの見方に慣れるということは、英語の世界観で物事を見えるようになるということです。
今回の内容は今日・明日いきなりペラペラに話せるようになる類のものではありません。しかし、半年・一年間のような長いスパンでみたときに、意識し続ければきっと役に立つものだと思っています。
また今回は、英語のモノの見方として「中心から周辺へ」を取り上げましたが、他にも英語には「発信源から始める」「登場人物を場に出す」という特徴があります。こちらについては、『英会話イメージトレース体得法』という書籍で紹介していますので、ご興味ありましたらご覧ください。
【英語を話すコツ関連記事】
【2018/11/30追記】
「日本語と英語の認知の違い」について書かれた日本語論文(pdf)を見つけました。ご参考までにどうぞ。→『日英語話者の視点構図と言語表現』(濱田英人著、札幌大学)
コメント
英語と日本語の物の見方の違いがよく分かった。例文2の日本語と英語のイラストの対比が小さいので、少し分かりづらい。文化に影響するという例文3は目から鱗だった。こういう異文化コミュニケーション的な部分も興味深い。最後のほうほ英語のモノの見方を身につけるための練習方法のくだりが、駆け足気味。
日本語と英語の根本的な違いの一面を端的に捉えて分かりやすく説明しているという点では評価できます。
しかし「日本語と英語でモノの見方が違っている」と宣言されてしまうと、真面目な読者ほど身構えて深刻に考え込んでしまいそうです。また「英語は聞き手の疑問に答える形で情報を追加していく」と指摘されると、まるで日本語が聞き手の疑問に答えられない、どこか劣った言語のようにも思えてしまいます。
英語では中心から周囲に話が進むというのは、確かにセンテンスレベルではそういうことが多いと思われます。ですが、話の切り出しから終わりまでの全体を見れば、必ずしもそうでないような気もします。それに、日本語でも口語では「ネコが横切ってるよ。コンビニの前を」とか「スターウォーズの最新作見たよ。渋谷の映画館で昨日」とかいう言い方を頻繁にします。言いたいことが心の中に強くある場面では、日本語でも背景説明をすっ飛ばすのではないでしょうか。記事を読んでみて「日本語話者でも背景から物を見ていっているとは限らないのでは?」という疑問が残ってしまいました。
記事のトピック自体がとても良いと思いました。日本人が英語で話そうとする際、そもそも何から言い始めればよいのかという問題自体が大きな悩みの種になりやすいので、モノの味方の違いの解説は非常にわかりやすく、英会話習得に役に立ちそうだなと思いました。図による解説もわかりやすかったです。
一点だけ、まとめにある「世界が変わる」という部分について、どう変わるのかということについてもう少し説明があると嬉しかったです。それはこの記事の本質ではないかもしれないのですが、英語ができるようになることで何が変わるのかということを提示していただけると、より英会話習得に対する意欲が掻き立てられると思いました。
英語でツイートをすることがあり、そういうときに書きたいことがスムーズに出てこなくていつもイライラします。直接会話をするのとは違いますが、この記事に書かれていることはとても参考になると思いました。記事の見出しにざっくりと目を通すだけでも参考になります。もっと時間をかけてじっくり読みたいです。
この切り口、ありがたく読みました。
今 英会話基礎クラスにいますが、知識量のわりに会話をしない受講者と言われていた私でした。これなら 会話が楽になりそう、空気穴があいたみたいです。
日本人がハイコンテクストな社会であることが、会話の構造にも滲み出ていたこともわかり、たいへん興味深く読みました。
英語に深く分入りながら 同時に抽象化して転用する学び方、見習ってほかの分野にも生かしたいです。