置き換え問題としてよく出題される must と have to の違いを、must と have to のコアイメージを元に解説しました。must と have to の例文は「肯定文の場合」「否定文の場合」「過去を表す場合」に分けて記載しています。
mustのコアイメージ
mustのコアイメージは「これしかないモノが迫ってくる」です。
mustの主な用法は「義務」「強い確信」「強いオススメ」です。
※助動詞 must の持つイメージ・意味についての詳細は「助動詞 must のイメージと意味・用法まとめ」をご参照下さい。
have toのコアイメージ
have to doの主な意味は「(状況的に)~しなければいけない」です。
have to doは「主語が何かをもっている」(have)と「~するべきこと」(to do)が組み合わさった表現です。
to doは正確には「toによって導かれた先にあるdoという行為」を表しています。「先にある」というイメージから「~するべきこと(義務)」や「これから~すること(予定)」などの意味が生まれています。
そのようなto doをhaveしているわけなので、have to doは「(状況的に)やらなければいけないことがある、これからやることがある」というニュアンスになるわけです。
※to do(to不定詞)についての詳細は「to不定詞の基本の意味・3用法まとめ」をご参照ください。
mustとhave toの違い
肯定文の場合
I must とI have toの違い
例文:I must be more careful – I have lost my keys.(もっと気をつけなくっちゃ…。鍵をなくしてしまったんだよ…)
I must は話し手自身の気持ちを表現しています。
話し手は「私はそうせざるをえない!選択の余地はない!」と感じているわけです。
例文:I have to finish the report.(その報告書を仕上げなければいけない)
I have to は他人(上司や政府など)から要求されていることによく使われます。
なお、上司から依頼されたことを明示する場合は、I have to finish the report for the boss. となります。
I must は「私自身の気持ち」という内的要因に焦点があたっています。
一方で、I have to は「客観的な必要性」という外的要因に焦点があたっています。
you must とyou have toの違い
例文:You must attend the meeting.(あなたはそのミーティングに出席しなければいけない)
この表現には指揮命令のようなニュアンスが含まれています。
たとえば、上司が部下にミーティングに出席するように命令しているような感じです。部下(聞き手)には、上司(話し手)がそれ以外の選択肢を考えていないことが伝わります。
例文:You have to attend the meeting.(あなたはそのミーティングに出席しなければいけません)
この表現には「出席しなければいけません」という訳を当てていますが、実際には「出席する必要があります」というニュアンスとの中間くらいの感じです。
たとえば、就職説明会で企業の担当者が応募者に「応募者はそのミーティングに出席しなければいけません(出席する必要があります)」と伝えているようなイメージです。
You mustは「直接的な指揮命令」であり強制的なニュアンスが強い表現です。
一方で、You have toは「状況や規則による誘導」であり必要条件を伝えているような感じになります。
【コラム】mustとhave toのどちらが厳しい表現なの?
一般的にmustはhave toよりも強制的なニュアンスが強く出ます。要するに押しの強い表現なので、それをもって強い表現だと言うことができます。
一方で、have toは必要条件を伝えているような表現です。その必要条件の水準が高ければ、聞き手からすると大変厳しい表現になるでしょう。
これは三国志の登場人物で喩えるならば、「腕力の強い張飛(must)と状況を整えて策略を巡らせる諸葛亮孔明(have to)のどちらが強いのか?」と聞いているようなものです。
文脈によって強さ・厳しさは変わってしまうので、ご質問に対しては「mustとhave toのどちらが厳しい表現なのかは一概に言うことができない」というのが回答になります。
否定文の場合
例文:You mustn’t attend the meeting.(あなたはそのミーティングに出席してはいけない)
この表現は「出席しないこと」を命令しています。相手に「やってはいけないこと(禁止)」を押し付けているわけです。
例文:You don’t have to attend the meeting.(あなたはそのミーティングに出席しなくてもいいです)
don’t have to doは「(状況的に)~するべきことをもっていない」であり、この例文は「そのミーティングに出席する必要がない(出席しなくてもよい)」という意味になります。
You mustn’tは「直接的な禁止命令」であり強制的なニュアンスが強い表現です。
一方で、You don’t have toは「差し迫った状況にはない」であり必要性がないことを伝えている感じになります。
過去を表す場合
例文:I had to apologize to him.(私は彼に謝らなければいけなかった)
過去の「~しなければいけなかった」ことを表現するときは、have toの過去形had toを使います。これはmustに過去形がないためです。
なぜmustに過去形がないかというと、mustが表しているのは「話し手の現在の(目の前にある)気持ち」だからです。
mustに含まれる「目の前にある」という感覚と、過去形で「現在(目の前)から距離をとる」こととが相容れないため、mustには過去形がないわけです。
まとめ:mustとhave toの違い
mustのコアイメージは「これしかないモノが迫ってくる」です。
have to doの主な意味は「(状況的に)~しなければいけない」です。
表現 | 意味 | 備考 |
---|---|---|
I must | 私は~しなければいけない | 私自身の気持ち(内的要因) |
I have to | 私は~しなければいけない | 客観的な必要性(外的要因) |
You must | あなたは~しなければいけない | 直接的な指揮命令(強制) |
You have to | あなたは~しなければいけない あなたは~する必要がある |
状況や規則による誘導(必要条件の伝達) |
You mustn’t | あなたは~してはいけない | 直接的な禁止命令(強制) |
You don’t have to | あなたは~しなくてもよい あなたは~する必要はない |
差し迫った状況にはない(必要性の否定) |
I had to | 私は~しなければいけなかった | mustには過去形がない |
【must と have to の違い関連記事】
コメント
must と have to の違いについてケースごとにわかりやすく説明されていて非常に勉強になりました。特にI must be more carefulという使い方は私にとってとても新鮮な感じの表現でした。mustは強い表現だからとついつい使わないようにしていたので、これを機会にもっと使ってみようと思います。
習った時からmustとhave toの違いはほとんどわからず、完全にお互い言い変える感じでしか掴んでいませんでした。
が、mustは主観、have toは客観的あるいは外的な位置にその必要性があるというのがこの記事で何とか把握することができました。
『mustとhave toも混同するよな~』と思いながら読みましたが、コアイメージのイラストや説明により、とてもスッキリした感じがします。最初にある「押しの強いmustくん」「状況で誘導するhave toさん」のところから、笑えて理解につながったような。
「mustのほうがhave toよりも強い表現」と私も覚えていましたが、「mustとhave toのどちらが厳しい表現なのかは一概に言うことができない」というのも納得できました。mustに過去形がない理由もです。
記事にも書いてありましたが、日本では主に”must”の置き換えに”have to”を入れることを勉強しますが、アメリカに留学したとき明らかに使い分けをしていたことに驚きました。日本の学生や英語を日頃から使用している人にこの記事を是非読んでほしいと思いました。特に、「私自身の気持ち」と「客観的な必要性」のポイントは重要だと思いました。
mustとhave toの違いはコアイメージから容易に理解できた。I mustとI have toについては、内的要因と外的要因に焦点が当たっているかどうかで区別されるということだが、参考の例文で、We must go home early〜やWe have to pay our taxesが挙げられているが、私は、I have to go home…と言ってしまうことがしばしばあるので、ちょっと戸惑ってしまった。I have to go homeもI must pay my taxesも言えると思うので、もう少し明確な(納得できる)説明がほしい。
I mustとI have toのイメージはつかみやすかったが、Youのパターンの説明が難しく感じました。have toのコアイメージとYouの場合の誘導というのが、どこかしっくりこない感じです。それと、コラムの三国志の例えは、具体的で想像しやすく、わかりやすかったです。
mustとhave toの違い、よくわかりました。また、msutには過去形がない理由も、この記事で良く分かりました。mustとhave toでは、mustの方が常に強い意味合いがあると思っていたので、そうではないことを知れました。
mustとhave toはどちらも~しなければならないを表し、mustの方が強制力が強い、というように理解していましたが、その違いはコアなイメージである内的要因と外的要因の違いに由来するという説明はわかりやすかったです。
have toの方は、~する必要があるというやわらかい言い方がしっくりきます。
コラムの部分がとてもよかったです。説明文の中に第三者からの質問があるといい意味で少し脱線して、そこまでの内容の理解度が増しました。また、その後から否定文やhave toの過去形も一緒に紹介されているので、それぞれの場面での使い方が明確でとてもいい記事だと思いました。
mustとhave toは学校の試験によく出てきた問題ですが、意味が微妙に違うのですね。前半の説明ではあまりピンときませんでしたが、後半にいくつかの例が挙げられていて、それでよくわかりました。最後にまとめてある表を見ると一目瞭然で助かりました。