The new model is awesome, but it doesn’t come cheap.
「新しいモデルはすごいけど、安くは買えないよ」
買うということを、come で表しているのですか?(出典:Yahoo!知恵袋)
でも、よくよく調べてみたら come cheap は「安くなる」ではなくて「安く手に入れる」という意味みたいで…。どういう構造なのか気になったので分析してみました。
SVC の第2文型
まず、この英文がどういう構造なのかについて考えてみます。
例文:It doesn’t come cheap.(それは安く手に入らないよ)
・It:主語
・doesn’t come:動詞
・cheap:補語(形容詞)
ポイントは「cheap が何の役割を果たしているのか」ですが、cheap は「安い」という意味を表す形容詞です。
そのため、S+V+形容詞という形である以上、この cheap は補語ということになります。つまり、この例文は SVC の第2文型ということになります。
この come は連結動詞(linking verb)ではない
SVC における V は be動詞 が使われることが多いですが、一般動詞も使われることがあります。たとえば、look や keep、get などです。
・She looks happy today.(彼女は今日、幸せそうに見える)
・He kept quiet during the meeting.(彼は会議中、静かにしていた)
・I got tired after working all day.(一日中働いて疲れた)
これらの動詞は「主語」と「状態を表す補語」を結びつけるので、連結動詞(linking verb)と呼ばれます。
しかし、さきほどの例文 It doesn’t come cheap. の come は連結動詞ではありません。come が連結動詞で用いられる際は「~の状態になる」という意味で使われるためです。
そうすると、この例文は第2文型に属する構造をしているのに、使われている動詞 come が連結動詞ではない、という、普通に考えたら矛盾している状態になっているわけです。
ただ、この例文が普通に使われている表現であることも事実です。そのため、ネイティブが実際に捉えている考え方に準拠するしかありません。
結論から言うと、この例文を矛盾なく理解するためには、It doesn’t come(SV)と It = cheap(SC)を分けて考える必要があると考えています。
・SV:It doesn’t come(それは手に入らない)
・SC:It = cheap(それが安い状態で)
つまり、「手に入らない」ことを述べた後で、主語がどういう状態なのかを付け加えているわけです。普通の「主語が補語の状態になる」といったシームレスにつながっているのではなく、2ステップ踏むようなイメージですね。
この解釈方法は、普通の 文型SVC における解説ではないため、既存の文法体系に含まれていないことは明らかですが、そう考えなければ理解はできません。受け入れるしかないのかな、というところですね。
同じ構造になる他の文例
他にも、連結動詞ではないけれど第2文型になっているような文例はあるのかを探してみました。ChatGPTに依頼してみたところ、2つほど当てはまりそうな例文が出てきました。
・Success doesn’t come easy.(成功は簡単には手に入らない)
・It comes free.(それは無料で付いてくる)
例文:Success doesn’t come easy.(成功は簡単には手に入らない)
これは come cheap と同じく、「成功は手に入らない」→「成功=簡単な状態で」という構造になっています。
ただ、この場合は「成功=簡単な状態で」という別のところが引っかかってしまいます(「成功が簡単な状態」って、どういう状態なんだ?という疑問が出てくる)。
これは形容詞 easy が副詞的に使われている例で、take it easy(気楽にいこう)でも見られるものですが、本題である come cheap と同じ構造というところに集中できないという意味でイマイチな文例ですね。
例文:It comes free.(それは無料で付いてくる)
これは「それは手に入る」→「それ=無料の状態で」であり、come cheap の構造を理解するのにピッタリの表現と言えます。
ただ、このフレーズを検索してみましたが、あまり一般的に使われている雰囲気がありません。come free with で「無料で~に付いてくる」というフレーズもあるみたいですが、こちらも海外のオンライン英語辞典には掲載されていませんでした。
これまた一般的に使われていなさそうという意味で、イマイチな文例と言わざるを得ないですね。
というわけで、come cheap と同じ構造であり、一般的にも使われている表現というのは、本記事執筆時点では見つかっていません。もし、読者の方で「この表現は come cheap と同じ構造なんじゃない?」と思われる表現がありましたら、ぜひコメント欄に記載いただけると幸いです。
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