英語の冠詞とは何者なのでしょうか?この記事では「無冠詞」「不定冠詞 a/an」「定冠詞 the」について概要を説明した後に「無冠詞と不定冠詞 a/an の違い」「不定冠詞 a/an と定冠詞 the の違い」を解説しています。モノを表現するときの日本語と英語の違いについても取り上げています。
冠詞とは
学校で冠詞は「名詞の前につけるもの」と習いますが、これはあまり良い説明ではありません。実際には「名詞を入れる枠組み」と捉えたほうがよいものなのです。
フレーズ:a book(一冊の本)
フレーズ:the book(その本)
英語の語順は「冠詞+名詞」となっています。つまり、冠詞という「枠組み」を先に設けておいて、その「中身」に名詞を入れているわけです。
枠組みによって、続く名詞がどのような性質を持つものなのかを予め宣言する、これが冠詞の働きであり、ネイティブはこの語順でモノを見ていることに注意してください。
冠詞の種類
冠詞とは「枠組み」であり、名詞とは「中身」であると述べました。ここでは、冠詞を3つの場合「無冠詞」「不定冠詞」「定冠詞」にわけて、概要を確認しましょう。
冠詞の種類 | 主な働き | 例文 | 例文の意味 |
---|---|---|---|
無冠詞 | 輪郭や外枠を持たせない(中身のみ) | I ate fish. | 私は魚料理を食べた |
不定冠詞 a/an |
典型的な一つという輪郭を持たせる | I ate a fish. | 私は魚を一匹食べた |
定冠詞 the |
文脈や常識などによって特定される | The fish was big. | その魚は大きかった |
無冠詞の fish が「魚料理」という意味になることや、無冠詞の fish と不定冠詞の a fish がどう違うのかなど、これだけではわかりにくいと思いますので、次で取り上げて確認してみましょう。
無冠詞と不定冠詞 a/an の違い
不定冠詞 a fish
例文:I ate a fish last night.(私は昨晩、魚を一匹食べました)
不定冠詞 a fish は「典型的な魚一匹」を表しています。a fish は水中で泳いでいる姿のままの魚であり、この例文はピチピチ跳ねているような魚をそのまま食べたという意味になります。
日本語訳から受けるイメージとは随分異なっていますね。
無冠詞 fish
例文:I ate fish last night.(私は昨晩、魚料理を食べました)
無冠詞 fish は「魚料理」を表しています。この例文は料理された魚を食べたという意味になります。
しかし、冠詞の有無でどうしてこのような違いが生まれてしまうのでしょうか。
無冠詞と不定冠詞の違い
冠詞は「枠組み」、名詞は「中身」に戻って考えてみましょう。
不定冠詞 a fish は「典型的な一つという輪郭」のなかに「魚の中身」を入れたものです。つまり、a fish という表現によって、手で触れるような輪郭を持った魚を一匹出現させているわけです。
これに対して無冠詞 fish の場合は、冠詞がないのでいきなり「魚の中身」を出現させているようなイメージになります。
動詞が ate(eat の過去形)なので、食べる対象としての魚の中身、つまり魚肉のことを指しており、常識的な解釈から「魚料理を食べた」という意味になるわけです。
※無冠詞 fish は「魚のコンセプト(例:水中にいる生物、えら呼吸をする、ひれで泳ぐ etc)」を表すこともありますが、これも「魚の中身」の一種です。無冠詞 fish が「魚肉(魚料理)」を表すのか「魚のコンセプト」を表すのかは文脈で判断します。
不定冠詞 a/an と定冠詞 the の違い
よく質問される「a と the の違い」についても簡単に解説しておきましょう。
例文:I have a cat. The cat is fat.(私は猫を一匹飼っています。その猫は太っています)
不定冠詞 a cat は「典型的な一つという輪郭」のなかに「猫の中身」を入れたものです。難しそうに聞こえてしまいますが、a cat は普通の猫を一匹出現させているだけです。
これに対して定冠詞 the cat の場合は、「文脈や常識などによって特定される」という枠組みのなかに「猫の中身」を入れています。日本語で言えば「その猫」に当たります。
定冠詞のキーワードは「特定」です。スポットライトが当たっているようなイメージで、どの猫についてなのか話し手と聞き手がお互いにわかっているという前提で使われるものです。
「a と the の違い」という観点では、不定冠詞 a/an は「導入」するときに使う、定冠詞 the は導入済みのモノを「特定」して再利用するときに使う、と覚えておくとわかりやすいと思います。
モノを表現するときの日本語と英語の違い
ここまで冠詞について述べてきましたが、冠詞が難しいのは「モノを表現するときに日本語と英語で見方が異なっている」からです。
繰り返しになりますが、英語では何かモノを見たとき、外枠や輪郭をかたどった上で中身を表現します。先に枠組みに注目しているわけです。
一方で日本語においては、モノの外枠や輪郭はあまり意識されません。言語的にも枠組みを表現しなくてもよいのです。
例えば、「週末は友だちと遊びに行ってくるよ」という日本語に出てくる「友だち」を考えてみましょう。
これだけだと何人の友だちと遊ぶのかわからないですよね。一人の友だちと遊ぶのかもしれませんし、複数の友だちと遊ぶのかもしれません。
このようなあいまいさを包含できるのは、日本語では枠組みを表現しなくてもよいからなのです。
蛇足ですが、このような表現方法は文化にも影響を及ぼしていると私は思っています。「西洋絵画」と「日本画」を例に考えてみましょう。
西洋絵画では額縁つまり「枠」が立派ですね。枠がせりだしていて「絵」がその中にあります。一方で日本画の掛け軸は「枠」というものがなくて台紙の上に「絵」をはりつけています。
これは日本語・英語におけるモノの表現方法とよく似ています。外枠から中身への順でモノを表現する言語が、絵画を立派な額縁に入れるという文化に影響を与えたのではないか…。このように考えてみると言語って面白いですよね。
実用的なことを言うと、英語の冠詞に慣れるためには、現実に見えているモノの枠組み(外枠・輪郭)を先に注目するように意識すると、少し取っ掛かりが得られると思います。日常生活で気軽に行えることですので、ぜひ試してみてくださいね。
冠詞のまとめ
冠詞の種類 | 主な働き | 例文 | 例文の意味 |
---|---|---|---|
無冠詞 | 輪郭や外枠を持たせない(中身のみ) | I ate fish. | 私は魚料理を食べた |
不定冠詞 a/an |
典型的な一つという輪郭を持たせる | I ate a fish. | 私は魚を一匹食べた |
定冠詞 the |
文脈や常識などによって特定される | The fish was big. | その魚は大きかった |
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コメント
英語の冠詞は本当に難しいと思います。私が留学していた時、一番悩んだ文法でした。その当時は、丸暗記的に使用していました。しかし、今回の記事では丁寧に解説してあるので、もっと早くに出会いたかったと思いました。
「モノを表現するときに日本語と英語で見方が異なっている」ことが知れたことがとても役に立ちました。
英語など外国語を理解するのは、根底からの日本語との理解の仕方の違いというのがやっぱり一番のハードルですよね。
冠詞の使い方は英語を学ぶ際にまず覚える事の1つですがついついあいまいになってしまうのでこの記事を読んで改めて勉強になりました。名詞を入れる枠組みとして冠詞をとらえるという発想はなかったので今後適切な冠詞をスムーズに選べそうです。