相手に「どうぞどうぞ」と勧めるとき “Please, please.” と言っている方がいますが、実はそれ間違いなんです。please のイメージを元に、その理由を解説しました。
また「相手に何かをやって欲しい場合」「相手の行動を促す場合」「相手に何かを手渡す場合」における英語表現も掲載しています。編集部の遠藤と今井による対談形式でお送りします。
「どうぞどうぞ」のつもりで使われる “Please, please.”
今井 以前、ネイティブの友だちが僕の実家に遊びに来たことがあるんです。そいつはタバコを吸うヤツで、”May I smoke here?”(タバコを吸っても構いませんか?)って僕の両親に聞いたんですが、うちの両親が “Please, please.” って返していたんです。「どうぞどうぞ」のつもりだと思うんですが、これアカンですよね?
遠藤 残念ながら間違えてますね。
今 やっぱりそうですよね。自分も経験的に違うなって思ったんですが、うまく両親に説明できなくて…。
遠 なるほど。それでは、今回は「どうぞ」と please について解説してみましょう。
「相手に何かをやって欲しい」ときに please は使われる
今 そのときネイティブの友だちに聞けばよかったんですが、”Please, please.” ってどういう風に聞こえたんでしょうね。
遠 「お願いです。お願いなので、タバコを吸ってください」ですね。
今 うわぁ…、完全にヤバいヤツのセリフじゃないですか…。ネイティブの友だちもビビっただろうなぁ。でも、なんでそんな意味に?
遠 以前、「please の意味とは」でも解説しましたが、please は “if it please you” が省略されたもので、「相手に何かをやって欲しい」という意図のもと「お願いします」というニュアンスを表します。今回の場合は「相手にタバコを吸って欲しい、お願いします」となってしまうわけです。
「相手の行動を促す」ときは go ahead などを使う
今 じゃあ、うちの両親は何て言えばよかったんでしょう?
遠 相手が既にやりたいことを表明しているので “Go ahead.” ですね。直訳だと「前に進めてください」ですが、日本語の「どうぞ」の意味になります。
また今回のタバコのように迷惑になりうる行為への返答には、”I don’t care.“(私は気にしませんよ)とか、”No problem.“(問題ないです)といった言葉を添えると、相手も安心してタバコが吸えるでしょうね。
今 なるほど。
「相手に何かを手渡す」ときは here you are などを使う
今 日本語の「どうぞ」ってお土産を渡すときにも使いますよね。これも please と言って渡していたりするのを見かけるんですが、これもダメですよね?
遠 その場合は “Here you are.” や “Here you go.” などが適切ですね。
please という表現を使うと、相手はどうしても「何かをやるようにお願いされている」ように感じてしまいます。それも「少し負担がある行為」をお願いされていると感じやすいのです。
そのため、お土産を渡されながら please と言われると、ネイティブは「このお土産を誰かに渡すようにお願いされているのかな…」という方向性で考えてしまいやすいわけですね。
日本語「どうぞ」 vs 英語 “please”
今 本当に please って厄介ですね…。でも、「どうぞ」が please になるときもあると思うんですが…。
遠 そうですね。「どうぞくつろいでいってね」という意味を表す “Please, make yourself at home.“などは、「どうぞ」が please になりますね。
今 うーん、どういうときに「どうぞ」が please になるんですか?
遠 日本語「どうぞ」のポイントは「自分の願い」をベースにしているところです。「どうぞ〜してくださいますように」と語尾を補うとわかりやすいかもしれません。
今 「どうぞくつろいでいってね」は「どうぞくつろいでいってくださいますように」と、自分の願いを表明しているわけか…。
遠 一方で please は「相手にやって欲しいこと」をベースにしています。それも、ちょっと頑張らないといけないようなことですね。それを相手にお願いするときに使います。
今 ”Please, make yourself at home.” は自分の家にいるようにしてねってことを相手にお願いしているわけですね。
なるほど。それが「自分の願い」で、「相手にやって欲しいこと」でもあるときには、「どうぞ」を please にできるってことですね。
遠 そうですね。ちょっと複雑になってしまったので、まとめておきましょう。
日本語の「どうぞ」 | 英語で please を使うと… | 正しい英語表現 |
---|---|---|
(「タバコを吸っていい?」に対して)どうぞ。 | (×)お願いします。タバコを吸ってください。 | Go ahead. I don’t care. No problem. |
(お土産を渡しながら)どうぞ。 | (×)お願いします。?(誰かに手渡せばいいのか?) | Here you are. Here you go. |
どうぞくつろいでいってね。 | (◯)お願いします。自分の家にいるようにしてね。 | Please, make yourself at home. |
今 なるほど!おかげで please について理解が深まりました。ありがとうございましたー。
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コメント
日本語から考えてそれに当てはまる英語を考えてしまうと今回のどうぞのように間違った英語を話してしまうことが多いのではないかと感じました。
今回の記事を読み、私が留学していた時のことを思い出しました。その当時も、もしかしたら記事と同じでなんでも”please”を使用していた気がします。そして、”go ahead”や”here you are”などは確かにネイティブが使用していたので、私もマネをした記憶があります。大変参考になりました。
”Please, make yourself at home.” という表現は、受け手にとって、時に過度の負担を求められるニュアンスがあるように感じました。それが間違いないなら、新発見でした。
ついつい日本語の「どうぞ」と同じ感覚でplease, pleaseと言っている人がいますが、今回の記事のように、状況に応じてgo aheadになったりhere you areになったり「どうぞ」にもさまざまなバリエーションがあるのを改めて気づかされた。また、pleaseが「自分の願い」で、「相手にやって欲しいこと」でもあるときに使われるというくだりがとても参考になった。
pleaseと言うのは相手に負担があるけどやって欲しいみたいなニュアンスだと言うのは初めて知りました。こういう日常的な表現で気を付けないといけない感じの記事が多分一番実用的だと思うので、もっと読みたいです。
相手からの要望があった時に、何と返事していいかわからずとっさにpleaseが出てしまいがちなので気を付けなければいけないなと思いました。「相手にやって欲しいこと」を念頭において、適切な状況で使えるようにしたいです。