突然ですが、問題です。次の空欄に当てはまる前置詞として by と through から適切なものを選んでください。
I got rich ( ) hard work.(私は一生懸命働いて、お金持ちになりました)
………
「一生懸命働いて」という訳からすると、by と through のどちらでも当てはまりそうですよね。でも、答えは一つです。by と through のイメージを元に、by と through の違いを解説した上で、問題の正解を確認していきましょう。
by のイメージ
by のコアイメージは「~に寄って」です。
by は、ある状況に至った経緯を表します。つまり、何かに「近寄って・接した」結果、ある状況になった、という一連の流れを表しているわけです。
また A by B で、A が B に接したときに「A は B の影響を受ける」というニュアンスも含んでいます。
例文:My house is heated by gas.(我が家はガス暖房を使っています)
by gas は「ガスで」という意味。「我が家はガス暖房の働きを受けている」イメージを含みます。
through のイメージ
through のコアイメージは「内部を通り抜ける」です。
through は「入り口から入って出口から出る」イメージで、空間的なモノ以外に時間的なモノにも使われます。
例文:I learned that through a lot of practice.(私はたくさんの練習を通じて、それを体得しました)
「たくさんの練習を通じて」という意味。当たり前ですが、主語の「私」が能動的に練習をしています。
by と through の違い
誤文:I learned that by a lot of practice.(私はたくさんの練習によって、それを体得しました)
さきほどの例文の through を by に置き換えると、私はたくさんの練習に影響を受けて、その結果として体得したことになってしまいます。
日本語訳だけを考えると「たくさんの練習によって」で大丈夫そうに思えてしまいますが、実際には違和感のある表現になってしまうわけなのです。
by, through の問題解説
by と through の大きな違いは次のようになります。
- by:働きを受ける(受動的)、仕組みを利用する
- through:主語が行動して物事を進める(能動的)
これを踏まえたうえで、冒頭の問題を確認してみましょう。
■問題
次の空欄に当てはまる前置詞として by と through から適切なものを選んでください。
I got rich ( ) hard work.(私は一生懸命働いて、お金持ちになりました)
↓
↓
↓
■解説
正解:through
I got rich through hard work.(私は一生懸命働いて、お金持ちになりました)
私が hard work したわけなので through が適切です。
by だと hard work の影響を受けて、お金持ちになったようなニュアンスになってしまいます。要するに「私が頑張った」感じではなくなってしまうわけです。
by と through の違い:まとめと補足
例文 | 意味 | 注意 |
---|---|---|
My house is heated by gas. | ガスで | ガス暖房の働きを受けて(受動的)、仕組みを利用して暖かくなる |
I learned that through a lot of practice. | たくさんの練習を通じて | 私が練習をする(能動的) |
参考:I drove through Shizuoka.(静岡を車で通過した)
参考:I waited through the night.(私は夜通し待った)
どちらの英文でも、私が行動して物事を進めていることがわかりますね。
参考:I reserved a hotel room by fax.(私はファックスでホテルの部屋を予約しました)
ファックスの仕組みを利用して予約を完了させたイメージです。予約する過程でファックスの働きを受けていることを感じ取っていただければと思います。
【参考記事】
参考記事のポイント
・through は「空間や時間の通過」以外に比喩的なものとして「システムやプロセスの通過」を表す。
・by は「手段やメカニズム、仲介を利用する」
・一般的には「動きや進展」が含まれていたら through を用いる。
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コメント
by と through には大きな違いがあるんですね。間違って使うと違和感が半端ないことになってしまう…。by は受動的で「~の影響を受けて」、through は能動的で主語が行動する。用法をしっかり覚えたいものです。
最初byとthroughの違いというタイトルを見て「全然違うじゃない」と思いましたが、例文を見て早速??になりました。説明を読んで納得できたので、今後は受動的か能動的か、仕組みかそうではないのかなどの点に注意しながら適切な助詞を使うようにしようと思います。
byの仕組みによってゴールまで運んでいってくれるイメージというのがとても解りやすいイメージで、ファックスでホテルの部屋を予約したという例もとても解りやすくしてくれました。また、throughも私が行動して物事を進めているというのがよく解って、しっかりと理解できました。
byとthroughの使い分け方はあまり意識したことがなかったのでとても参考になりました。byは受動的なイメージ、throughは能動的なイメージ、と覚えると使い分けが正しくできるようになると思いました。
最初に空欄に当てはまるのはbyかthroughのどちらかを聞いておいてから、それぞれの違いを説明、その後もう一度質問に戻って解答解説するやり方は非常に分かりやすい。byとthroughの意味の違いも、それぞれの解説を通じとてもよく理解することができた。
by と throughの違いですが、これは何となくですけど把握しやすい部類ではないかと感じています。
byが受動的、throughが能動的と言う割とはっきりしたものがあるからかもしれません。
でも英語を使い続けていないと忘れそうな部分でもありますね。
“by”と”through”の違いはこれまで大雑把にしか感じておらず、ここまで真剣に読み解こうと思ったことはありませんでした。しかし、今回の記事を読み、丁寧に解説されているので大変参考になりました。補足もあり勉強になりました。
byは受け身的に用い、throughは能動的に用いると簡単に割り切って覚えた方がいいのではないかと思ってしまいました。
それぞれの単語がもっているイメージを押さえていないと本当の理解とは言えません。
しかし、覚えることがたくさんある英語学習ですから、安易な道に走ってしまい、簡単に割り切って覚えたくなるのが、凡人の常です。
throughは ” 〜を経験して”というニュアンスがあるので、受動、能動の違いで考えると辻褄が合わなくなります。I burn calories by running. のby は方法であり 自分が能動的にrunしてもthroughは使いません。You can improve through a lot of practice. これは沢山の練習を経験して、ということで辻褄が合います。