Take an umbrella with you.は「傘を持っていきなさい」という意味ですが、なぜ with you は必要なのでしょうか? with のイメージを元に、「take 物 with 人」の意味を解説しました。類似表現の「have 物 with 人」の意味も記載しています。
「take 物 with 人」の意味
例文:Take an umbrella with you.(傘を持っていきなさい)
with you は「身につけて」という意味。with は携帯を表しています。
この with がないとどうなるか別の例文で確認してみましょう。
例文:Take a card, any card. Now look at it without showing me. Okay, put the card back into the deck and shuffle the cards.(カードを一枚取ってください、どのカードでもいいですよ。それでは私に見せずにカードを見てください。OK、カードを戻してシャッフルしてください)
take a card は「カードを一枚取る」という意味です。
この例文はカードマジックのセリフですが、take が「取る」という意味だけであることがわかりますね。
取った後、そのまま持っておくのか、手放すのか、はたまた他の誰かに渡すのかなどは、ちゃんと指定しなければいけないというわけなのです。
「have 物 with 人」の意味
例文:Do you have any money with you?(いまいくらかお金は持っていますか?)
with you は「身につけて」という意味。ここでも with は携帯を表しています。
この例文については「Do you have… と相手に向かって話しているのだから、with you がなくても通じるのではないか」という質問をよく受けるので、with you がない例文も確認しておきましょう。
例文:Do you have any brothers or sisters?(兄弟や姉妹はいますか?)
have のイメージは「主語が関係している場の上にある」です。
当然ですが、この例文は「兄弟や姉妹を手の届く範囲に持っていますか」という意味ではなく、「(距離とは無関係に)兄弟や姉妹があなたの関係する場の上にいますか?」という意味です。
ここで、さきほどのご質問「Do you have と相手に向かって話しているのだから、with you がなくても通じるのではないか」に戻りましょう。
with you を取り除いた Do you have any money? は「(距離とは無関係に)お金があなたの関係する場の上にありますか?」となります。
要するに、手元の財布以外に、銀行口座の残高や家に置いてあるお金、へそくりまで含んでしまうわけです。
そのため、「いま手元にお金は持っていますか?」と聞きたいときは、携帯を表す with をつける必要があるわけです。
※前置詞 with の持つイメージ・意味についての詳細は「前置詞 with のイメージと意味・用法まとめ」をご参照下さい。
コラム:日本語と英語の認知の違い
この with you のような英語の使い方は私たち日本人には難しいものがあります。というのも、これらの背景には「モノの見方の違い」があるためです。
具体的には、日本語は「話し手が場に入り込む言語」であり、英語は「話し手が場から切り離されている言語」だという違いがあります。
場に入り込む日本語では「目の前の情景を話し手・聞き手が共有」しています。
その前提で「お金を持っていますか?」と聞けば、「いま手元にお金を持っていますか?」と聞かれているものと解釈するのが自然になるわけです。
一方で、場から切り離されている英語では「話し手・聞き手ともに真っ白なキャンバスに描くところからスタートする」イメージになります。
その前提で Do you have any money? と聞けば、「(この場に限らず)お金を持っていますか?」という解釈になってしまうわけです。
今回、英語は「場から切り離されている」ことを取り上げましたが、他にも英語には「発信源から始める」「中心から周辺へ」という基本的な原則があります。こちらについては、『英会話イメージトレース体得法』という書籍で紹介していますので、ご興味ありましたらご覧ください。
まとめ
例文 | 意味 | ポイント |
---|---|---|
Take an umbrella with you. | 傘を持っていきなさい | with は「身につけて(携帯)」を表す |
Take a card | カードを一枚取る | 取った後、どうするのかは不明 |
Do you have any money with you? | いまいくらかお金は持っていますか? | with は「身につけて(携帯)」を表す |
Do you have any money? | お金は持っていますか? | 手元の財布以外に、銀行口座の残高や家に置いてあるお金、へそくりまで含む |
コメント
with youの理解は難しいなと読みながら感じていたのですが、コラムにてなぜ理解が難しいのかを説明してあったので、とてもおもしろいと感じましたし、英語が「話し手・聞き手ともに真っ白なキャンバスに描くところからスタートする」イメージというのがとても解りやすかったです。
このコラムの中でのwithについて、普段あまりつけないで使っていたことが多かったですが、あるのと無いのとで意味が全然違ってしまうことがわかりました。今まで誤解されていたかもしれません。Do you have any moneyの使い方も気をつけないと全く違った返事が返ってきてしまうこともよく理解できました。
日本語は「話し手が場に入り込む言語」、英語は「話し手が場から切り離されている言語」という解説がとても印象的でした。「話し手・聞き手ともに真っ白なキャンバスに描くところからスタートする」という説明で、with you が何故必要なのかが理解できました。
口語だとついついwithを外しがちですが、withをつけないと表現があいまいになるとは思ってもいませんでした。親しい相手にDo you have money?と聞く際は、大概今お金持っている?という意味で聞いていたのですが、with youがないと相手の全財産についてというかなり失礼な意味になるとは気づかず大変勉強になりました。
この記事の中で一番興味深く読んだのは、日本語と英語の認知の違いについて論究したコラム欄でした。具体的に言うと、場という概念を用いて英語と日本語の発想の相違を解説しているところが目新しく感じました。これを根拠にして、take 物 with 人で、with 人がなせ必要であるのかを導いているのですね。
普通に何の迷いもなくwith 人を使っていたので、改めて疑問を投げかけられた記事は新鮮でした。with がつく文とつなかい文をうまく提示しながら、具体的に説明していたのでわかりやすかったです。
takeとhaveのいずれの用法も、with youがない場合には意味が異なってしまうが、それは英語が「話し手が場から切り離されている言語」だからである、という説明がとても興味深く、納得しやすいものだと思いました。
英語と日本語の基本的な認知の違いという最も深い所まで行くとは思いませんでした。
日本語では主語なんかが言葉の上では曖昧だったり省略してしまってもいいものですが、それは話し手と聞き手が全部共有してるからなんですね。
とても面白い記事で、分かりやすかったです。学校で英語を学んでいた時は、「with 人」の必要性をこのようなかたちで教えてもらうことはありませんでした。英語には様々な使い方があり、まだまだ知らないことが多くあって面白いなと思いました。もっと他のことを学びたくなるような記事でした。
この記事を読んで、私が初めてアメリカに留学した時のことを思い出しました。日本の学校の授業で学ぶ”with”よりもアメリカ人は頻繁に利用している感じがありました。勉強では理解できない内容がこの記事には詰まっていると思います。