前置詞 to は「~に」という意味が有名ですが、3 to 1(3対1)のように「~に」では捉えられない用法もあります。この記事では to のコアイメージから、to の持つ意味・用法について解説します。
to のコアイメージ
to のコアイメージは「別のところに向かう動きとその向かう先にある対象」です。
イラストにあるように、何かから別のところに向かう矢印を出して、その先の対象物に到達させるようなイメージです。to をシンプルに表すならば「矢印と到達点」となります。
to の主な意味
英語 | 意味 | 例文・フレーズ |
---|---|---|
to | ~に | go to the station(駅に行く) |
~まで | from one to ten(1から10まで) | |
[結果]~して | be bored to tears(退屈してあくびの涙が出る) | |
~対~ | 3 to 1(3対1) |
to はそこまで難しい意味はありませんが、「矢印と到達点」からは連想しにくい意味もあります。そこで、to のコアイメージからどう発想すれば、そのような意味が出てくるのか、その手がかりとして用法イメージを用いて解説していきます。
これら to の主な用法「範囲・限界・結果」「結合」「対比」を含めて、例文で確認していきましょう。
to の用法
「方向と到達点」を表す to
to の「別のところに向かう動きとその向かう先にある対象」というコアイメージから、「方向と到達点」を表す用法が派生しています。
例文:She walked to the station.(彼女はその駅まで歩いていった)
to the station は「その駅まで」という意味。to は駅を到達点として、そこに向かっていくことを表しています。
例文:He sent a present to her.(彼は彼女にプレゼントを送った)
to her は「彼女に」という意味。to は彼女を到達点として、そこに向かっていくことを表しています。
「範囲・限界」を表す to
to の「別のところに向かう動きとその向かう先にある対象」というコアイメージから、「~まで」という範囲を表す用法が派生しています。そして、その範囲の端っこを強調すると「限界」を表すことになります。
例文:My son can already count from one to ten.(私の息子はもう1から10まで数えられます)
from one to ten は「1から10まで」という意味。from A to B で「A から B まで」という範囲を表します。
例文:I answered the questions to the best of my knowledge.(私が知っている限り、質問に答えました)
to the best of my knowledge は「私が知っている限り」という意味で、to は限界を表しています。
この to は私が知っていることの最大限まで至るイメージで捉えるとよいでしょう。なお、to the best of my knowledge は to my knowledge と省略されることもあります。
「結果」を表す to
ここまで to のイメージを地点や範囲のような場所的なニュアンスで用いてきましたが、時間的・時系列的なニュアンスで用いると「結果」を表すようになります。
例文:I was bored to tears listening to the lecture.(その講義を聞いていて、あくびが出るほど退屈だった)
I was bored(退屈だった)、to(その結果)、tears(あくびをして涙が出る)という流れであり、to は結果を表しています。
この bored to tears という表現はまったく面白くない授業などに対してよく使われます。
例文:To my surprise, they got married.(驚いたことに、彼らは結婚した)
to my surprise は「驚いたことに」という意味。
この to も「(何かが起きた)、to(その結果)、my surprise(私の驚きに至った)」という流れで、結果を表しています。
なお、この例文は to my surprise の後に、they got married と私を驚かせた原因を述べており、倒置になっています。倒置する前の英文は They got married to my surprise. となります。
「結合」を表す to
A to B をモデル化すると「A → B(到達点)」となり、「A を到達点である B に」となります。ここから、A を B に結びつける「結合」の用法が出てきます。
例文:Attach your photo to your application form.(写真を申請書に添付しなさい)
to your application form は「申請書に」という意味。attach A to B は「A を B に添付する」という意味で、to は A を B に結合する働きをしています。
「対比」を表す to
さきほどの「結合」の用法は、A と B を結びつける働きをしていました。ここから一歩進めて、A と B を並べて比べるイメージから「対比」を表す用法が派生します。
例文:Giants beat Tigers (by) 3 to 1.(ジャイアンツがタイガースに3対1で勝った)
3 to 1 は「3対1」という意味。to は 3 と 1 を並べて対比させる働きをしています。
なお、英語では通常 3 to 1 ではなく 3-1 と表記します。読み方は three to one です。
例文:I prefer walking to driving.(私はドライブよりも散歩の方を好みます)
prefer walking to driving は「ドライブよりも散歩の方を好む」という意味。prefer A to B で「B よりも A の方を好む」となります。
to は walking(歩くこと)と driving(運転すること)を並べて対比させる働きをしています。
このように to の表す対比は、数字的な大小比較というよりは優劣や前後のような順序を表すときによく使われます。
- senior/junior to A (A よりも年上である/年下である)
- superior/inferior to A (A よりも優れている/劣っている)
- prior to A (A よりも前に)
「適合」を表す to
最後に「適合」という用法について説明します。この用法は「動詞が持つ矢印(動作)」に「to の矢印」を重ね合わせるイメージで捉えると理解しやすいです。と言っても、これだけではよくわからないと思いますので、例文で詳しく見ていきましょう。
例文:They sang to her piano.(彼らは彼女のピアノに合わせて歌った)
sing to her piano は「彼女が弾くピアノに合わせて歌う」という意味です。「彼らは歌う」という動作に「彼女が弾くピアノの音」を重ね合わせている(=動詞 sing の矢印に、to her piano を重ね合わせている)わけです。
適合を表す用法では to A で A の進行に合わせるというイメージになるので注意してください。
例文:I hope this gift is to your liking.(このギフトがあなたの好みに合いますように)
to your liking で「あなたの好みに合う」という意味です。ギフトをあなたのいいねと感じるものに合わせるイメージで捉えるとよいでしょう。
まとめ
to のコアイメージは「別のところに向かう動きとその向かう先にある対象」です。
to の主な用法は「範囲・限界・結果」「結合」「対比」です。
用法 | フレーズ | 意味 | 備考 |
---|---|---|---|
方向と到達点 | to the station | その駅まで | |
範囲・限界 | from one to ten | 1から10まで | |
結果 | bored to tears | 退屈で、その結果、あくびをして涙が出る | |
結合 | attach your photo to your application form | 写真を申請書に添付する | |
対比 | 3 to 1 | 3対1 | 3 と 1 を並べて対比させる |
適合 | sing to her piano | 彼女が弾くピアノに合わせて歌う | ピアノの進行に合わせる |
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コメント
toには~に向かうという意味があり、前置詞の中では比較的扱いやすいものだなと思っていましたが、こうしてみるといろいろな意味があるんだなと思いました。対比や結合での使い方はあまりイメージがありませんでしたが、とても勉強になりました。
最初に出てきた、toのコアイメージを見てから、「彼女は駅まで行った」の図を見た時に、とてもピンときてわかりやすかったです。全体的にわかりやすいのですが、to the best of my knowledgeの部分は、最初から省略形の方が私は悩まずに済みました。その他の英文は簡単でtoの理解を深めることが出来ました。
前置詞の”to”は本当に理解することが難しいと思っていましたし、イディオム感覚で直接暗記していました。しかし、こちらの記事を読み、理解度が増したことは間違いありません。コアイメージと図はもちろんのこと、例文が多くて大変参考になりました。
toは前置詞の中でも、ややこしく、いろんな使い方があると感じていたので、取り上げていただいて嬉しかったです。主な用法についても、概ね納得できました。ただ、「結果」のところだけは、あまりしっくりきません。「つまらなかった結果、欠伸が出た」というふうにつながるのだとは思いますが…、少し理解が難しかったです。
前置詞to の意味・用法がこんなにあるとは知りませんでした。文脈や「~to~」とか「 to~」 とかの熟語で覚えたほうがいいのかもしれません。解説にある「to の用法イメージ」の図解も分かりやすく参考になります。
TOの用法が用途別に詳しく説明されていて非常にわかりやすかったです。限界、結果、適合の使い方は、今までどうしてTOなのかよくわかっておらず、どちらかと言うとイディオムとして理解(暗記)していました。会話で使うにはまだまだ慣れが必要ですが、文章読解等においては論理的に理解できそうです。
toの持つコアなイメージが方向と到達点ということを理解することによって、各用法での使われ方がイメージしやすいと思いました。~to tearsなどの有名なイディオムは、結果を表すtoからきているのは知らなかったです。
toというのは英語の表現の中でも特に何気なく認識しているものと言えますが、本当に何も考えていなかったということを再確認しました。個人的には、「結合」と「対比」の用法がそもそもなぜtoなのか分からないままできていたので、この記事を読んでとても勉強になりました。
toの用法のそれぞれの例文がとても分かりやすかった。to the best of my knowledge は「私が知っている限り」というイディオムも「限界」を表す表現として紹介しているが、イディオムも覚えられるのでとても良いチョイスだと感じた。bored to tearsも同様です。
to のコアイメージが方向と到達点であることを踏まえておけば、前置詞 to の意味・用法の全体像は容易に把握することができると感じました。とても良い記事だと思います。
It is important to themのto themのイメージは、彼らにとって、彼らには、になるのが理解できませんでした。向かう先にある対象としてイメージし、形容詞importantの対象である、と思います。
コメントありがとうございます。It is important to them は本記事では扱っていませんが、近い用法としては「限定」となるかと思います。
“Education is important to them.” (彼らには教育が重要です)
これは Education is important(教育は重要だ)と述べたあと、彼らを指さして to them(彼らには)と限定しているような感じですね。ご指摘の通り、to them を「向かう先にある対象」でイメージするので大丈夫だと思います。