come は「来る」だと思っていたら、「行く」という意味もあったりして、一筋縄ではいかない英単語です。come をちゃんと理解するのに必要な「場の中心」について述べた上で、「行く」という意味になる場合についても解説しました。
come のコアイメージ
come のコアイメージは「場の中心に近づいていって、たどり着く」です。
come のポイントは「場の中心に近づく動き」+「到達」という2つの動作を併せもっていることです。
※正確に言うと、come が到達を表すためには to が必要なこともよくあります。つまり、come 単体ではちゃんと到達を表しているとは言いにくいわけです。ただ、come は文脈のフォローを受けて到達を表すことも多いので、そのような観点からコアイメージに「到達」を含めています。
come の意味の樹形図
コアイメージを元に、come の主な意味を分類したものが、次の樹形図です。
come の主な意味と例文
来る
主語が場の中心にいる自分のところへ近づくとき、日本語では「来る」と表現します。「場の中心」=「自分 or この場所」であることに注意してください。
例文:She came to the party last night.(彼女は昨夜のパーティーに来ました)
この英文の前提として、場の中心・話題の中心は「昨夜のパーティー」にあります。また、話し手である自分もそのパーティーに参加しているものとします。
この場合、She came to the party で、主語である彼女は場の中心(=パーティー=話し手がいる場所)へ近づき、たどり着いたことになるので「彼女はパーティーに来ました」という日本語訳になります。
(明日、私の家に来てください)
Come here and look at this.
(ここに来て、これを見て)
He came running when he heard the news.
(彼はその知らせを聞いて走ってきました)
行く
話し手である自分が場の中心にいる相手のところへ近づくときも come を使いますが、このとき日本語では「行く」となります。この場合、「場の中心」=「相手 or 別の場所」となっていることに注意が必要です。
come は「来る」「行く」という別々の意味をもちますが、come が表しているのは「場の中心に近づく動き」であり、イメージとしては同じものです。それを日本語にしたときに
・場の中心が 自分 or この場所 → 来る
・場の中心が 相手 or 別の場所 → 行く
と日本語訳が分かれてしまっているだけなのですね。
このことから come を使いこなすためのポイントは「日本語に頼らずにイメージで状況を描写するようにすること」になります。日本語は話し手の視界を前提として状況描写する言語なので、日本語に訳した瞬間から「視界」を組み込んでしまうことになります。
しかし、英語はそのような視界を前提としていません。俯瞰図のように全体を描写する、いわば真っ白なキャンバスに絵を描くように状況を描写する言語です。
このあたりの日本語と英語におけるモノの見方の違いについては、書籍『英会話イメージトレース体得法』で詳しく解説しているので参考にしていただければと思います。
例文:“Can you help me with this?” – “Sure, I’m coming.”(「これを手伝ってもらえますか?」「もちろん。いま行きます」)
この会話の前提として、場の中心・話題の中心は「手伝いを求めている相手のいる場所」にあります。また、話し手である自分は相手のいる場所から離れているものとします。
この場合、I’m coming で、主語の自分は場の中心(=相手のいる場所)へ近づいていくよ、と言っていることになるので「いま行きます」という日本語訳になるわけです。
なお、日本語に引きづられて I’m going. と言ってしまうと、「場の中心から離れていく動き」を表すことになります。この場合の場の中心は「手伝いを求めている相手のいる場所」なので、そこから離れていく=「どこか別のところへ行く」と相手は受け取ってしまうわけです。
つまり、手伝いを求めている相手のところへ行くことを伝えたいのであれば、英語では come を使わなければいけないということですね。
(「急いで!もう出るよ!」「いま行くよ、ちょっと待って!」)
The kids are calling me, so I’m coming.
(子どもたちが呼んでいるので、行きます)
I’ll come over to your place later.
(後であなたのところに行きます)
Let me come and see what’s wrong.
(ちょっと行ってきて、何が問題か見てみます)
I’ll come along with you to the store.
(一緒にお店に行きますね)
到着する、現れる
場の中心にたどり着く(=到着する)ということは、その場に現れるということでもあります。
例文:The train will come at 5 PM.(電車は午後5時に到着します)
電車がたどり着く=電車が「到着する」という意味ですね。
(彼は遅刻した後、ついに会議に現れました)
The package came yesterday afternoon.
(荷物は昨日の午後に届きました)
Spring comes in March in this region.
(この地域では3月に春が訪れます)
The sun came and went yesterday.
(昨日は太陽が見え隠れしていました)
起こる、生じる
何か出来事などが場の中心に現れる場合は、「起こる、生じる」という意味になります。
例文:The change came suddenly and surprised everyone.(その変化は突然起こり、みんなを驚かせました)
その変化が現れる=その変化が「起こる」という意味ですね。
(トラブルはいつも準備ができていないときに起こります)
New opportunities come when you work hard.
(一生懸命働くと新しいチャンスがやってきます)
Problems often come when you least expect them.
(問題は往々にして予期しないときに生じるものです)
思いつく
何か考えなどが場の中心(=自分の脳裏)に現れる場合は、「思いつく」という意味になります。
例文:An idea suddenly came to me while I was walking.(歩いているときに突然アイディアが思い浮かびました)
アイディアが現れる=アイディアが「思い浮かぶ」という意味ですね。
(彼が質問したとき、何も思いつかなかった)
A song came to me as I was working.
(仕事中に歌が頭に浮かんできた)
The memory came to him after seeing the old photo.
(古い写真を見て、その記憶が彼に蘇った)
ある状態になる
主語が「ある状態」にたどり着くとき、「ある状態になる」という意味になります。
どちらかというと、すぐにそうなるのではなく、ある程度の時間をかけて、段階的にプロセスが進むイメージでそうなることに注意してください。
例文:After years of hard work, my dreams finally came true.(長年の努力の末、私の夢がついに実現しました)
my dreams came true は「夢が現実のものになった」という意味です。いきなり実現したわけではなく、ある程度の時間とともに、少しずつ段階を踏んで、実現していったニュアンスを含んでいます。
(走っているうちに彼の靴ひもがほどけてしまった)
The colors on the old painting have come off.
(古い絵の色が剥がれた状態になっている)
The flowers have come into bloom.
(花が咲いた/花が咲く状態になった)
「ある状態になる」を表す come と go の比較
come と go ともに「ある状態になる」という意味をもっていますが、一般的に come はポジティブな結果や状態を表す傾向があり、go はネガティブな結果や状態を表す傾向があります。
come の例
come true | 夢や願望が実現する |
come alive | 生き生きしてくる、活気づく |
come around | 意識が回復する |
come together | 人々が協力してうまくまとまる |
come through | 困難を乗り越える、成功する |
go の例
go bad | 食べ物が腐る、悪くなる |
go sour | 関係や状況が悪化する、問題を抱える |
go wrong | 計画や試みが失敗する、何かがうまくいかない |
go blue | 憂鬱になる |
go downhill | 状況が悪化する、どんどん悪くなる |
どうしてこのような傾向が出てくるのか、その理由として「場の中心に置かれやすいもの」による影響が大きいと考えられます。たとえば、場の中心に置かれやすいものとして次のようなものが挙げられます。
・話題になっている物や場所
・正常な状態
・本来の状態
・理想の状態
やはり、場の中心に置かれるのは「基準となるもの」であり、そのようなものは基本的にポジティブなものになりやすいのでしょう。
そして、come はそのような場の中心に近づく動きを表すので、come の後にはポジティブな単語が続けられやすい。一方で、go はそのような場の中心から離れる動きを表すので、go の後にはネガティブな単語が続けられやすいということだと思います。
もちろん、come undone(崩れる)、come untrue(実現しない)のように come の後にネガティブ表現が続くパターンもありますし、go well(よくなる)のように go の後にポジティブ表現が続くパターンもあるので、絶対にそうだとは言えませんが、一つの参考にしてもらえればと思います。
~するようになる
さきほどの「ある状態」のところが「~すること(to do)」に置き換わった場合、「~することになる(=~するようになる)」という意味になります。
この場合も、徐々にそうしていく過程を含むことが多いので、より深みのある表現になりやすいです。
例文:He came to love the city after living there for years.(何年も住んでいたら、彼はその街を好きになった)
came to love で「愛するようになった」という意味です。徐々に愛するようになっていく過程が含まれており、そのため、より深いレベルで愛しているニュアンスも含んでいます。
(彼は自分の間違いに気づくようになった)
She came to appreciate her parents more as she grew older.
(年を取るにつれて、彼女は両親のことをより感謝するようになった)
They came to accept the new rules over time.
(時間とともに、彼らは新しいルールを受け入れるようになった)
He came to be respected by his peers.
(彼は同僚たちから尊敬されるようになった)
The lake came to be known as a popular tourist spot.
(その湖は人気の観光地として知られるようになった)
まとめ
come のコアイメージは「場の中心に近づいていって、たどり着く」です。「場の中心に近づく動き」+「到達」という2つの動作を併せもっていることに注意してください。
コアイメージを元に、come の主な意味を分類したものが、次の樹形図です。
意味 | 例文 |
---|---|
来る | She came to the party last night. |
行く | “Can you help me with this?” – “Sure, I’m coming.” |
到着する、現れる | The train will come at 5 PM. |
起こる、生じる | The change came suddenly and surprised everyone. |
思いつく | An idea suddenly came to me while I was walking. |
ある状態になる | After years of hard work, my dreams finally came true. |
~するようになる | He came to love the city after living there for years. |
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