アメリカのレストランでは注文すると、店員さんが “You got it.” と言うことがよくあります。このフレーズの意味は「了解、承りました」なのですが、私たち日本人にはいまいちしっくりこない表現だと思います。この記事では You got it をイメージを元に解説しました。
You got it のイメージと意味
You got it が表す意味一覧
You got it. は簡単な単語だけで成り立っているため、比較的幅のある表現になります。ここでは、まず You got it. が主に表す意味を確認しておきましょう。
番号 | 用法 | 意味 | 例文 |
---|---|---|---|
1 | 承諾 | 了解、承りました | “Can you send me the report by 5 PM?”(午後5時までにレポートを送ってくれますか?) “You got it.“(承知しました) |
2 | 理解 | その通りです | “So, you need me to pick up the kids after school?”(つまり、学校の後で子供たちを迎えに行けばいいんですね?) “You got it.“(その通りです) |
3 | 確認 | (疑問文で)わかった? | “We need to leave the house by 7 AM to catch the flight. You got it?“(飛行機に乗るために朝7時までに家を出る必要があります。わかった?) “Yeah, I got it.”(うん、わかった) |
4 | 励まし | 君ならできるよ | “I’m nervous about this test.”(このテストが心配だよ) “You got it! Just stay calm and do your best.”(大丈夫、君ならできるよ!落ち着いてベストを尽くしてね) |
5 | 返答 | どういたしまして | “Thanks for your help!”(手伝ってくれてありがとう!) “You got it.“(どういたしまして) |
このうちの2番目の「その通りです」と3番目の「わかりましたか?」については、get 自体に「わかる」という意味があるので理解しやすいと思います。
4番目の「君ならできるよ」については、相手に対して自信をもたせたり、安心感を与えるために使われます。”You got this.” とほぼ同じと考えてかまいません。なお、You got this. の方が意味の揺れ幅が少ないので、相手に誤解なく伝えることができます。
5番目の「どういたしまして」については、最近出てきた用法でこれから徐々に広がってくるかもしれませんが、一旦この記事では割愛させてもらいます。
You got it のイメージと承諾を表す理由
“You got it.” がもつ意味の中で最もよく使われる「了解、承りました」について例文とあわせて見ていきましょう。
(レストランにて)
客:I’ll have the cheeseburger, please.(チーズバーガーをお願いします)
店員:You got it!(かしこまりました)
イラストにあるように it は「リクエストした内容」を表しています。got のところは本来 have got となる省略形であり、「すっかり自分のものにした状態をもっている」というニュアンスを表します。
これらをあわせた You got it. は、「あなたはリクエストした内容をすっかり自分のものにしましたよ」→「そうなる(=あなたのリクエストが実現する)ように承りました」→「かしこまりました」となるわけです。
You got it の使用例
You got it. はカジュアルながらも確実な了承を表します。
レストランにて
客:Can I get a glass of water with lemon?(レモン入りの水を一杯もらえますか?)
店員:You got it!(かしこまりました)
職場にて
同僚A:Can you finish this by tomorrow?(明日までにこれを終わらせてくれる?)
同僚B:You got it.(了解)
※同僚同士の関係だけでなく、上司と部下の関係でも使用可能です。
LINEなどにおける家族間でのやり取り
母:Please pick up some milk on your way home.(帰りに牛乳を買ってきてください)
父:You got it.(了解)
You got it を難しくしている原因
You got it と I got it の違い
(レストランにて)
客:I’ll have the cheeseburger, please.(チーズバーガーをお願いします)
店員:You got it!(かしこまりました)
You got it. という店員さんの返答が私たち日本人にとってしっくりこない理由は、主語が You になっているからでしょう。
「店員が承諾したことを表すのであれば、店員さんのセリフの主語は I になるはずじゃないの?」ーーこのように思った方は多いと思います。
そこで、店員のセリフとして “You got it.” と “I got it.” だと、どう印象が変わるのかを比較してみましょう。
You got it. の場合はお客さんに焦点を当て、お客さんが求めたものが確実に提供されることを表現しています。
I got it. の場合は店員自身が理解したことを示していますが、これはお客さんに対する応答としては少し自己中心的に感じられるかもしれません。
サービス業ではお客さんに対する応答は「お客さん中心の言葉遣い」が求められます。そのため I got it. ではなく You got it. のような表現がより自然で適切になるわけです。
日本人が I got it を使いたくなる理由
アメリカのレストランでは、店員さんは I got it ではなく You got it で応じるのが普通であることを説明しましたが、それでも日本人的にはしっくりこないと思います。
どうして私たち日本人は I got it の方を使いたくなってしまうのでしょうか。その理由は、日本語におけるモノの見方にあります。日本語では「話し手の視界」を前提とした表現を使うのが普通なのです。
日本語では、お客さんからの注文であろうが、話し手(店員)を基準とした表現を使います。
・(私は)わかりました。
・(私が)承りました。
なお、日本語では話し手を基準とした表現を使うと述べましたが、相手のことを丁重に扱う方法がないわけではありません。それが謙譲語や丁寧語などです。
たとえば、「承りました」は謙譲語の「承る」+丁寧語の「ます」の過去形「ました」から構成された言葉です。このような言葉を使い、自分を下にすることで、相手を立てているわけですね。
まとめ
日本語には日本語の前提条件があり、その中で他人とのやり取りを円滑にするための方法が編み出されています。
それと同じように、英語にも英語の前提条件があり、他人とのやり取りを円滑にするための表現方法があります。
この You got it. はその一種であり、「お客さん中心の言葉遣い」という観点から、I got it. よりも自然で適切な表現ということになります。
You got it のまとめ
You got it のイメージは「あなたはリクエストした内容をすっかり自分のものにしましたよ」で、「そうなる(=あなたのリクエストが実現する)ように承りました」「かしこまりました」という意味を表します。
英語では他人とのやり取りを円滑にするために相手中心の言葉遣いをします。そのため、相手からのリクエストに対しては I got it よりも You got it の方がより自然で適切な返答表現ということになります。
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